Quantcast
Channel: 読書は心の栄養
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1745

和平と平和

$
0
0

シエラレオネの場合、多くの司令官や兵士が望んだのは、
内戦中に行った戦争罪を無罪にすることだった。

犯罪に問われる恐れがあるのに武装解除や和平に応じるお人好しはいない。
DDRで仕事を得ても、自分たちが逮捕される可能性があれば意味が無いからだ。
そのため、多くの場合、和平合意の際は、武装勢力が武器を手放して兵士を辞めることと引き換えに無罪にすると明記される。
結局、シエラレオネでも、兵士たちは恩赦を与えられ、経済的に不満を抱かないよう一般市民として生きるために手に職をつける権利を得た。

平和とは、時に残酷なトレードオフの上で成り立っている。
安全を確保するためのやむを得ない手段として、「加害者」に恩恵が与えられる。

その「加害者」には、元子ども兵のミランのように、好んで加害者になったわけではない、
むしろ紛争の被害者といえるものもいる。
物心ついた時から銃を持たされ、教育を受けたこともなく、戦うこと以外に自分の価値がないと心から信じてしまうものもいる。
こういった人々への救済策は、たしかに必要だ。

一方で、家族を失ったり、身体に障害が残ったり、家を失い避難民となっている「被害者」に、
同じレベルの恩恵が行き渡ることはめったにない。
加害者の人数と比べて、被害者の数が圧倒的に多いからだ。

ーー中略ーー
被害者たちは、元兵士たちの不満が爆発した時、犠牲になるのは自分たちであり、
我が子であることが分かっている。
そして、「平和」という大義のために、加害者の裁きを諦め、理不尽さをのみ込み、
自らの正義を主張することを身を切られる思いで諦める。

職業は武装解除 瀬谷ルミ子 より


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1745

Trending Articles