私は2つの意味で、紛争について意識することは日本人にとって重要な事だと思っている。
ひとつは近年の紛争の形が変わってきていて、テロのように、拠点を持たないネットワーク型の紛争が増えてきているからだ。
今までのような「危険な地域に行くと危ない」から、
「脅威が国境を超えて向こうからやってくる」形に変わってきたのだ。
少数の人間が、国家や多数の人々に脅威を与えることが可能となった。
ーー中略ーー
二つ目の理由は、日本のもつ中立性と大戦後の復興の経験が、世界各地の紛争地に大きな影響を与えているという事実があるからだ。
「日本は、昔の戦争で、アメリカやヨーロッパに総攻撃を受けて、原爆まで落とされて、ボロボロになったんだろう?
なのに、今は世界有数の経済大国で、この国にも日本車があふれているし、
高級な電化製品はすべて日本製だ。
どうしたら、そうやって復興できるのか、教えてくれないか?」
私が今までに行った多くの紛争地でいわれた台詞だ。
アフガニスタンでは、日本人が言うからと、信頼して兵士たちは武器を差し出した。
ソマリアでは、アフリカで植民地支配をしたことがなく、支援を行う際にも政治的な思惑をつきつけない日本は、中立的な印象を持たれている。
そして、第二次大戦であそこまで破壊された日本が復興した姿を見て、
今はボロボロの自分たちの国も、日本のようになれるのではないかという希望を与える存在となっている。
日本が背負ってきた歴史的経緯は、他の国がどれだけお金を積んでも手に入れられない価値を持っているのだ。
日本人の多くは、それを知らない。
そして、世界で一定の地位を築いた今、道を見失い、自信を失っている。
職業は武装解除 瀬谷ルミ子より
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紛争と日本人
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