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ヨハネの黙示録

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今「新約聖書」に入っている、「ヨハネの黙示録」という文献があって、
ローマ人に対するユダヤ人の憎悪を端的に表現している。
これは、ヤハヴェ神殿を破壊したウェスパシアヌスの息子ドミティアヌスの治世に書かれた予言の書で、紀元一世紀末の成立である。
「ヨハネの黙示録」のヴィジョンは複雑だが、要約すると、こういうことになる。

以前、ナザレのイエスというユダヤ人が、治安を乱したかどで、ユダヤ人の長老会議で死刑の判決を受け、ローマ人によって処刑された。
イエスはじつはメシヤであり、ローマ人の支配を打倒してユダヤ人を解放するはずの王だった。
いまや、この世の終わりが近づいている。
その日に、ヤハヴェ信仰を守ってローマ人に屈服しなかったユダヤ人、十二部族からそれぞれ一万二千人、すべて十四万四千人が生き返って、イェルサレムのシオン山の上に集まる。
メシヤ・イエスが本来の王者の姿をとって、白い馬に乗り、天の軍勢を率いて出現する。
サタン(暗黒の原理)は主(光明の原理)の御使によって千年の間、地底に閉じこめられ、
その千年の間、十四万四千人はイェルサレムのシオン山の上で、イエスの玉座のもとで地上を支配する。
千年の期間が終わると、サタンは最終的に打倒される。
あらゆる死人は審判を受けて、イエスをメシヤと認めなかったユダヤ人は第二の死によって罰せられる。
古い天地は消え去り、新しいイェルサレムが天から下って、日月の光ではなく、神の栄光に照らされて、イエスはのユダヤ人たちが、新しい世界を永遠に支配する。
つまり時間は停止する。
「油を注がれた者」の意味の「メシヤ」をギリシア語に訳すと、「クリストス」となる。
この「クリストス」が、日本語訳の「新約聖書」では「キリスト」となった。

「キリスト」がすなわち「メシヤ」であり、ローマの支配を打倒してユダヤ人のヤハヴェ信仰を守護する王なのだから、「キリスト教徒」は、すなわちユダヤ教徒で、ナザレのイエスこそがメシヤだったと信じるユダヤ人だ、ということになる。
実際、「新約聖書」の「使徒行伝」では、ギリシア語の「クリスティアノス」(クリスチャン)がこの意味に使ってある。

そういうわけで、ユダヤ教のイエス派がキリスト教であり、イエスをキリストとして受け入れるということは、
すなわちユダヤ人のローマ打倒運動に加わることを意味した。

ところがこういった反ローマが本質のキリスト教が、紀元392年になって、こともあろうにローマの国教になってしまった。
正直に言って、どうしてそういうことがありえたか、納得の行く説明を聞いたことがない。

岡田英弘著作集Ⅰ 歴史とは何か より

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