この本は、日本のバブル崩壊前に出版されている。
つまり、日本の経済が世界一になったときの状況で、この本はどのようにして日本の経済がアメリカを抜いたのか、ということをアメリカの立場から分析している。
震災以後、様々な本を読むにつけ、
自虐史観から脱したりすると、自分の経験から過度に日本側から見るようになります。
たとえば経済についても、スーパー301条、日米構造協議などを通じて日本はアメリカの好きにやられた、という感じたりです。
でも、その状態からさらに進むと、相手の立場も見るようになると思います。
実際にスーパー301条がそれほど効果的だったのか
アメリカはどのような状況で対策を打ってきたのか
最終的には両方の立場を鑑み、自分の国のためになるにはどうすべきか、を考えられるようになりたいです。
これは、歴史においても同じで、
近現代史を日本側の立場だけから見たのでは、因果関係はわかりません。
一見、当事者でもない国の事象が巡り巡って日本国に影響する場合もあります。
この本を読んでいてそういうことをふと思いました。
元通産省事務次官の小長啓一という人は、田中角栄の助言者でゴーストライターだったようです。
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日本の通産省の官僚が仕込まれているのはエンジニアリングではなく法律で、
道具にはマイクロメーターではなくペンを使い、これでエレクトロニクス産業振興特別措置法を制定したのであった。
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彼らが使う言葉そのものに、会社を家族とみなす日本人の見方が反映している。
ビジネスマンが他社の者と話す時、自分の社を「うち」と呼ぶのは、「私の家」の縮小形であり、
相手の会社を「おたく」というのは「あなたの家」の丁寧語である。
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黒船来航につて
日本にとっては二重の衝撃だった。
第一は開国という事実そのもの、第二は日本は他に例を見ない卓越した存在との思い上がりが崩れ、少なくとも技術では西洋に後れを取っていると悟ったこと、である。
これは日本人がショックと呼ぶようになったものの最初で、
百年戦争のアジャンクール(フランス北部の村。百年戦争中イギリス軍がフランス軍に勝利した地)、蒙古の侵入、それにスペイン無敵艦隊の敗北
と並んで世界史の転換点に位置づけられる。
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元通産官僚の天谷直弘さんの著作からの引用
「経済学に対するアメリカ人の考え方は、企業が目前の生産高を増やしたりコストを引き下げるのには役立つかもしれない。
しかし、研究開発は将来のために必要で、研究開発は一種のギャンブルである。
ビジネスマンはリスクを嫌う。
研究開発に賭けるのをためらう。
見えざる手が企業を研究開発に駆り立てないのなら、目に見える手がその働きをしなければならない」
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日本との(軍需品の)協同生産は1950年代に始まり、日本企業の数社がF-86戦闘機の製造ライセンスを受けた。
以来、1960年代にはF-100、70年代にはPー3C、そして、最近ではF-15と一貫した生産が続いた。
そして、これらのプログラムは日本の技術水準の向上に、また、世界規模の航空機産業を育成するという日本の戦略に、非常に大きく貢献した。
日本がFSXの生産を提案できるほど実力をつけたのは、アメリカ側メーカーとの協同作業を先ず行い、徐々に生産責任範囲を拡大していったからである。
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日本人記者には、なかなか質問をしようとしないという驚くべき特質がある。
日本で記者会見が行われると、アメリカ当局者は、質問が出るのは決まった外人記者ばかりという事態に驚かされる(朝日新聞の大記者船橋洋一のような)例外はあるけれども、
日本人記者は総じて調査記事を書くのが苦手で、ややもすれば各省庁が新聞を世論形成の道具に使うことを可能にする。
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通産省が思い描く脅威とは、特定されてはいないが、決定的に重要なある種の技術分野で国内企業が工業能力面での優位を保持し得ないことからくる経済的脅威である。
こんな事態を避けるためには政府の活動が必要だ、というのが通産省の主張であった。
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通商法第301条(スーパー301条)について
これはアメリカにとって不公正な貿易だと思えるものについて対外制裁を発動するもの
一見、たいそう強力なムチに思われる法律だが、ムチを振るうよう求められると、大統領は大いに悩むのである。
大統領がムチを振るうのを渋る理由は主として3つある。
第一に、この法律はアメリカ型の経済だけしか前提においておらず、従って外国政府が現にやっている特定の行為を除去したり、変更させたりすることに焦点を絞っている。
ーー中略ーー
第二の理由は第一の理由から引き出される。
この法律は西欧型の経済こそ本質的に正しいという前提に立っており、それだけに貿易慣行の逸脱を公正か不公正かという物差しだけで測ることになる。
従ってアメリカにとって不利な状況を述べるとなると、どうしても耳障りで説教調の表現になる。
ーー中略ーー
第三の理由は、国家安全保障政策および経済活動を安全保障と切り離し、むしろその下位に立つものと捉えるアメリカの見方である。
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日米両国の半導体研究計画も、比較してみると例示的である。
日本では通産省とNTTが数社を選び出し、政府が後押しする研究計画にたずさわらせた。
政府の資金はかなりの額だったが、圧倒されるほどの巨額ではない。
しかしこれに加えて、NTTが確実に買い上げてくれ、それが大きな利益を生んだ。
選ばれた研究テーマはいずれも商品として役立つ製品を最大限に開発することに狙いを定めたものばかりである。
選ばれて研究に参加したのは、主として消費者や商業市場を相手にしている企業で、
製品を売ろうという意欲も、マーケティング能力や販売能力も備わった会社である。
このような特徴を持つ研究であれば、企業にとっても開発費用の一部を提供するだけの価値はある。
この計画は、できうるかぎり広く技術を普及させるために組まれていた。
これと対称的なのが、精巧な半導体の開発を目的としたペンタゴンの超高速集積回路計画であった。
この計画には営利企業も選ばれたが、多くは商品を開発する意欲も能力もない大手の防衛産業請負業者であった。
研究目的は防衛上必要な特定の技術に向けられ、商業活動に関連のあるなしは問題ではなかった。
ーー中略ーー
日米両国の異なる姿勢が相互作用すると、商品として役立つ技術の開発に関しては、必然的に日本側に有利に働くことになる。
アメリカはこうした分野の開発に総合的に取り組むことはしないし、関心すら示さない。
そのため、両国の産業の全体的な構造は、総合的な取り組みを見せ、なみなみならぬ関心をよせる日本人の手によって決められるようになってきた。
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