Quantcast
Channel: 読書は心の栄養
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1745

日本列島改造論 田中角栄

$
0
0

田中角栄元首相の有名な本

首相になる前に出版されている。
とても有名な本ですが、これまで読んだことはなかった。
日米逆転 成功と衰退の軌跡」 C・V・プレストウィッツ 
に元通産省事務次官の小長啓一がゴーストライターとして書いた本と書かれていてこの機会に読むことにしました。

実際、読んでみるとこの文章を政治家が書いたとはとても信じられない。
当時の読者は本人が書いたと信じていたのだろうか。

むすびとなる4ページ分ぐらいの文章はもしかすると田中角栄自身の言葉かもしれないが、
それ以外は違うといえるでしょう。

==================

大都市における車の渋滞はひどく、自動車のスピードは著しく落ちている。
関東地方建設局の46年秋の調査によると、東京都内の国道区間200kmにおける車の平均速度は時速20キロで、
朝夕のラッシュ時には、9キロにまで落ちるという結果が出ている。
また東京都の46年調査によると、日本橋から須田町、上野を通って浅草に抜ける国道六号、
日本橋から一ツ橋、神保町を通って巣鴨に抜ける十七号における車の平均時速は
それぞれ四キロ、七.七キロとなっている。

ここまで
東京の渋滞は現在はここまで悪くないと思われるので、改善したということだろうか。
それにしてもこの文章を見るだけでも政治家が書けるとは全く思えない。
他の文章も数字・統計が非常に多く出てきていて、日頃接している人でないと難しいだろうと思う。

==============

大規模工業基地を建設する上で第一に必要なのは、自然の浄化能力の範囲内に汚染物質の排出量を抑えなければならないということである。
汚染物質を薄めさえすれば、いくら出してもいいという濃度規制では不十分である。
規制を一歩進めて汚染物質の発生の絶対量を押さえる総排出量規制にまで持っていかなければ公害問題は解決できない。

==================

むすびから一部

明治百年の日本を築いた私たちのエネルギーは、地方に生まれ、都市に生まれた違いはあったにせよ、ともに愛すべき、誇るべき郷里の中に不滅の源泉があったと思う。
私が日本列島改造に取り組み、実現しようと願っているのは、失われ、破壊され、衰退しつつある日本人の”郷里”を全国的に再建し、私たちの社会に落ち着きと潤いを取り戻すためである。

人口と産業の大都市集中は、繁栄する今日の日本を作り上げる原動力であった。
しかし、この巨大な流れは、同時に、大都会の二間のアパートだけを郷里とする人々を排出させ、地方から若者の姿を消し、いなかに年寄りと重労働に苦しむ主婦を取り残す結果となった。
このような社会から民族の百年を切り開くエネルギーは生まれない。

かくて私は、工業再配置と交通・情報通信の全国的ネットワークの形成をてこにして、
人とカネとものの流れを巨大都市から地方に逆流させる”地方分散”を推進することにした。

ここまで
それまでの文章と比べると、本人が書いた、あるいはコンセプトを作ったと感じられる。



日本列島改造論 (1972年)/日刊工業新聞社
¥540
Amazon.co.jp


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1745

Trending Articles