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裏切りの同盟 ロバート・ベア

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著者は元CIAの工作員で、工作員時代の事を話している。
CIAによる検閲を受けているため、黒塗りの箇所がかなり多いが、とても面白い。

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彼らは、アメリカが消費する石油のうち、サウジアラビア産のものは8%程度に過ぎず、
アメリカへの四代石油供給地のうち3つは西側世界のカナダ、ベネズエラ、メキシコにある、と力説する。
たしかにそのとおりだ。
だが、サウジアラビアには世界の石油確認埋蔵量の四分の一が眠っており、
しかもその採掘コストは世界一安いかもしれないという事実を、彼らの主張は無視している。
更に重要なのは、サウジアラビアが世界の余剰生産力の半分、
つまり日量にして200万~300万バレルの余剰生産力を持っている点
だ。
ーー中略ーー
言い換えれば、私たちが石油をどの国から買おうとも、世界の石油価格を決めるのは、
余剰生産量の決定権を握るサウジアラビアなのだ。

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一年半たっても、9・11の真相究明につながるサウジアラビア人の逮捕は、まったく実現していなかった。
ーー中略ーー
王国の中等学校と大学は国際テロリストの養成機関となっている。
王国の公序良俗を保つ警察ムッタワは、自国民が国外で「正義の殺人」を企てるのをやめさせる気など毛頭ない。
それよりもっと重要なこと、たとえば祈りの時間に商店を閉めさせることや、
着衣の短すぎる女性の手足を殴ったり蹴ったりすることに余念がない。

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金持ちのサウジアラビア人も女性からの拒絶の言葉とは無縁だ。
オイルダラーがどっと流れ込んできた1970年代初頭、
目端が利くレバノン人が、王子たちのために売春婦を密入国させ始めた。
女達は中東航空の客室乗務員を装い、王宮に足がかりを築いたレバノン人のポン引きは、
その多くが室内装飾や建設工事に手を広げた。
ーー中略ーー
流入する王家の売春婦たちとは無縁の国民は、複数の妻を娶る。
若ければ若いほどよい。
70の老人が13,4の少女を妻にすることも珍しくない。
富裕なサウジ人の中には、あっさり国外に売春に出かける者もいる。
湾岸から飛び立つ飛行機に一度でも乗れば、長衣が脱がれ、煙草や酒が出てくるところを目にできる。

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(アドナン・)カショギは、1932年に現サウジアラビア王国を建国したイブン・サウドのお抱え医師の息子で、1970年代なかばにはアメリカとサウジアラビアの武器取引の八割方を仲介していた。
ロッキードからだけでも、70年から75年までの5年間に手数料として1億600万ドルを稼いだ。
70年代の10年間で、ほかの軍需関連企業からも何億ドルも懐に収めている。
アメリカ企業の国外への支払いを調査する上院小委員会でノースロップの役員が語った所によると、
同社はサウジアラビアの将軍たちを買収して自社製品を売りつけるために、
カショギに45万ドル渡したそうだ。
この陳述にもかかわらず、イラン・コントラ事件の最中、レーガン政権はカショギに仲介を任せた。

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1968年末、リチャード・ニクソンが大統領選を制すると、カショギはまっさきにお祝いに駆けつけた。
彼はファハド内相からの挨拶を忘れずに伝えた。
彼をサンクレメンテに送り込んだのがほかならぬファハド、すなわち「脳死」状態の現国王だ。
カショギは席をたつときに、たまたま百ドル札で100万ドル入ったブリーフケースを忘れていった。
誰も何も言わなかった。
カショギはホテルに戻ると電話を待った。
とうとう電話は鳴らなかった。
鳴るはずもなかった。
そのまま2日が過ぎ、カショギは策が功を奏したことを悟った。
アメリカ政府は金で買える。
スーツケースはイヴのリンゴさながら、その後の全てを変えた。

この話は歴史の本には決して出てこない。
ーー中略ーー
私はこの話をある当事者から聞いた。事実だろうか?私にはわからない。
だがこの話はリヤドやジェッダの宮殿では絶対の真実として受け止められている。

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2001年9月11日、ワシントンのリッツ・カールトン・ホテルで民間の投資会社カーライル・グループの年次投資家会議がひらかれていたまさにそのとき、わずか4km南の国防総省にアメリカン航空の77便が突っ込んだ。
もしユナイテッド航空93便が、目標にしていたと思われるホワイトハウスにぶつかっていたら、
会議の出席者たちは揺れを感じたことだろう。
カーライルといえばこれまでどんな衝撃にもびくともしなかったものだが。
会議にはグループの最高顧問で先代ブッシュ政権の国務長官を務めたジェイムズ・ベーカー、
カーライル・グループの会長で、CIA副長官、国防副長官を務め、
国家安全保障問題担当補佐官を経てレーガン政権最後の国防長官となったフランク・カールーチ、
そして世界でも屈指の建築会社ビン・ラディン・グループの代表で、
今日ではオサマ・ビン・ラディンの兄としてはるかに有名になった、
シャフィク・ビン・ラディンらが出席していた。

この集まりは、アメリカ政府とサウジアラビアとの奇妙な関係を見事に象徴していた。

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法人レベルで言えば、名を挙げるに値する政府高官のほとんどが、
サウジアラビアと取引のあった企業の少なくとも一社の役員になっている。
そして、サウジアラビアとの取引は実質的にどれもが不明瞭になり、
すべての金を生み出す彼方の油田の近くで砂嵐に呑まれて消えてしまう。

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国防政策委員会の機密保護の原則を破ったのが、
情報漏洩の巧手でサウジアラビアの従僕、ヘンリ・キッシンジャーではないかと考えられているのは、
皮肉めいていてじつにおもしろい。
後に彼はごく短期間ながら、情報収集の不手際から9・11の発生を許した疑いを調査するテロ情報調査委員会の長を務める。
しかし、前述のようにこの仕事に着手する前に辞任せざるを得なくなった。
それは彼が代表を務めるコンサルタント会社の顧客名簿にサウジアラビア人の名が載っていたからだと見て、まちがいなさそうだ。


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