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ショック・ドクトリン ナオミ・クライン

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米国の左寄りの視点から見た新自由主義の弊害を描いた本
とにかく共和党叩きです

左の(あくまで米国の)視点であることを念頭に、差っ引くところは差っ引いてもとてもいい本です。
惨事に便乗してビジネスを起ち上げ、経済を立て直すが、
それによる被害は無視する
という趣旨で描いてます。

例えばハリケーン・カトリーナの被害で水没したニューオリンズにおいて、
ニューオリンズ選出の有名な共和党下院議員リチャード・ベーカーがロビイストたちに向けて語った言葉
「これでニューオリンズの低所得者用公営住宅がきれいさっぱり一掃できた。
われわれの力では到底無理だった。
これぞ神の御業だ。」
ニューオリンズ屈指の不動産開発業者ジョゼフ・カニザーロ
「私が思うに、今なら一から着手できる白紙状態にある。
このまっさらな状態は、またとないチャンスをもたらしてくれている」

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フォード財団はインドネシア大学にゼロから経済学部を創設するために資金を提供したが、
スハルトが権力を握った途端、
「このプログラムで学んだ経済学者のほぼ全員が政府の要職に就いた」
と同財団の記録には書かれている。
学生の指導にあたる教師は大学からほとんどいなくなってしまった。
1974年、インドネシアで「外国人による経済破壊」に反対する
ナショナリストの暴動が起き、フォード財団にも民衆の怒りが向けられた。
同財団こそ、インドネシアの石油や鉱物資源を欧米の多国籍企業に売るよう、
スハルト政権の経済顧問らに教え込んだ張本人だというわけだった。

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ミルトン・フリードマンが「資本主義と自由」の序で、
ショック・ドクトリンの本質をつく影響力の極めて大きい次の一節を書いたのは、1982年のことだ。
「現実の、あるいはそう受け止められた危機のみが、真の変革をもたらす。
危機が発生した時に取られる対策は、手近にどんな構想があるかによって決まる。
われわれの基本的な役割はここにある。
すなわち既存の政策に代わる政策を提案して、
政治的に不可能だったことが政治的に不可避になるまでそれを維持し、生かしておくことである。」
新しい民主主義の時代において、この言葉はフリードマンの提唱する改革にとってのスローガンとなる。

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1989年の抗議運動(天安門事件)の指揮者であり、現在は「新左派」と呼ばれる中国の有力な知識人の一人である汪暉だ。
2003年にアメリカで出版された著書「中国の新秩序」で、汪は当時抗議運動に参加したのは
単にエリート学生だけでなく、工場労働者や零細企業の経営者、教員など
中国社会の幅広い階層にわたる人々だった
と説明する。

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さいごの章で、カトリーナからの復興作業についてこう書いている。

自力で復興に努めるこうした人々には共通する重要な点がある。
彼らは異口同音に、自分たちはただ建物を修復しているだけでなく、
自分自身を癒しているのだという。

その言葉には深くうなずけるものがある。
大きなショックを体験したものは誰しも、とてつもない無力感に襲われる。
太刀打ち出来ない力に圧倒され、親は子を救う術を失い、夫婦は離れ離れとなり、
身を守ってくれるはずの言えも危険な場所と化す。
この無力感から立ち直る何よりの方法は、助けること
皆で力を合わせて再生のために汗することだ。
「この学校を再開できたことは、このコミュニティがとても特別な場所であることを意味している。
人々は単に地理的にだけでなく、精神的にも、血筋によっても、
そしてここにどうしても帰ってきたいという強い気持ちによって結ばれているのです」
と、ニューオリンズのロウワー・ナインス地区にある
マーティン・ルーサー・キング・ジュニア小学校の副校長は話す。

こうした住民による自力復興は、惨事便乗型資本主義複合体の精神(エトス)の対極にあるものだ。
後者はモデル国家を構築するために、常にまっさらな白紙状態を求める。
だが自力で復興を目指す人々は、たとえばラテンアメリカの農業や工業の協同組合のように、
常にその場にあるものを、残った人手であれば誰でも、
壊れていなければどんな錆びついた機具でも、有効に使う。



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