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日本の宇宙戦略 青木節子

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この本は世界の宇宙科学の歴史、
国際条約の課程とその解釈
などを解説し、
それを踏まえて我が国の宇宙戦略を考えていくもの

<アメリカのスペースシャトル>
72.5回に1回という許容範囲を超えた高い事故率は、
再使用型宇宙機には飛行場に着陸するための翼がいるであろうと
安易に航空機の形状を類推した固定観念と
国防総省の軍事ミッションによる設計上の要請によるものだ
という説がある。

ーー中略ーー
国防総省が開発費を援助したことから、シャトルの設計概念には同省の意向が強く反映したが、
国防総省では、有事においてソ連の軍事衛星の回収を考えていたため、
宇宙空間での衛生改修後即座に米国領域に帰還するために、
大気圏再突入後進路を大きく左右に曲げることが可能な翼を要求した。

<中国の宇宙開発>
中国が模したとされるソユーズ宇宙船の初飛行は1967年であった。
90年代前半以降ロシアからこのような古い技術の移転を受けて、
神舟を成功させたという情況証拠があることなどにより、
中国の有人宇宙活動成功に対して寄せられるのは、必ずしも賞賛の声ばかりではない。
しかし、中国の有人宇宙計画の目的は最先端の宇宙技術を国際社会に証明することではないので、
神舟を宇宙技術の観点から判断すると、その意義が見えにくくなってしまう。
中国の有人活動は、短期的には国内世論向けの国威高揚が第一の目的であったといえるであろう。
有人宇宙活動を成功させた三番目の国である、「五大核兵器国、三大宇宙大国」、
という誇りがもたらす13億人民の統合意識こそが重要だからである。

<宇宙条約>
宇宙条約において問題となる点は第4条にある。
以下、一部抜粋
「月その他の天体は、もっぱら平和的目的のために(Exclusively for peaceful purposes)、
条約の全ての当事国によって利用されるものとする。」

①月その他の天体に入らない「宇宙空間」についてはどうするかの規定がない
②平和的目的の定義がないし、「もっぱら」とさらにあいまいになっている


これだけ曖昧な規定ではあるが、現在この条約が最も厳しい条約であり、
少なくともこの第4条のおかげで、宇宙に大量破壊兵器を配備することは禁止されている。

<スペースデブリ(宇宙のゴミ)>
毎年、スペースデブリは増加し続けており、
2005年には前年比2.5%の増加を見たと報告されるが、
明るい側面としては、増加率がここ数年減少し続けていることである。
1961年から96年にかけて年平均240個ずつスペースデブリは増加したが、
97年10月から2004年6月末日までにかけての約6年半で
総計603の新しいデブリしか生み出していないのである。


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