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ブレジンスキーの世界はこう動く Z・ブレジンスキー

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この本は1998年に出版された本
この時代は、ソ連が崩壊し、ドイツが統合し、EUがまさに生まれようとしていた頃です。

当時の情勢からよく将来(現代)の国家情勢を指摘できたものだ、と感心します。
もちろんいくつか間違っていたところはあるものの、概ね正しかったように思えました。

<フランス>
ドイツにはフランスの力の限界が分かっている。
フランスは経済力ではドイツにはるかに劣る上、軍事力も強くはない
(1991年の湾岸戦争で露呈した)
アフリカの衛星国のクーデターを鎮圧するには十分だが、
ヨーロッパを防衛することも、欧州域外に大規模な戦力を投入することもできない。
現実のフランスは、ヨーロッパの中級国家以上でも以下でもない。
したがって、統合ヨーロッパを建設する面では、
ドイツはフランスの誇りを尊重しようとしているが、
ヨーロッパの安全を維持する面では、フランスの主導権に素直に従うつもりはない。
ドイツは、ヨーロッパの安全保障については、
アメリカが中心的な役割を果たすべきだとの立場を崩していない。

<アメリカの対ヨーロッパ主要目標>
一、統合後のヨーロッパを世界政治の舞台でアメリカの対等な同盟相手として受け入れる用意があることを、明確に表明する必要が有る。

二、大西洋地域の国際機関における権限配分について、フランスの見解を部分的、段階的に受け入れる必要が有る。

三、ヨーロッパの範囲を決める際や、それに付随して、バルト三国、ウクライナをヨーロッパの機構にどう位置づけるかなど、ロシアとの関係で微妙な問題を処理する際に、アメリカは断固として精力的、重点的に関与する必要があり、またドイツとの協力が必要になる。

<ソ連崩壊に伴って登場したロシアの地政戦略>
一、アメリカとの「成熟した戦略的同盟関係」を優先させる。この関係の内実は世界の共同支配だとする見方もある。

二、「近隣諸国」を重視する。ロシア主導型の経済統合を主張する見方もあるが、ある種の帝国支配をいずれ復活させ、アメリカとヨーロッパに対抗できる力を作り出すべきだとする主張もある。

三、アメリカに対抗する同盟関係を追求する。ユーラシア大陸でのアメリカの優位に対抗して、ユーラシアに何らかの反米同盟を結成する。

エリツィン政権の当初には、第一の考え方が優勢だったが、まもなく、
エリツィン大統領の地政戦略に対する批判という面もあって、
第二の考え方がロシアの政界で力をもつようになった。
第三の考え方がそれより少し遅れて、1990年代半ばから目立つようになった。
ソ連崩壊後のロシアの地政戦略が明確で無い上、失敗しているとの見方が広まったためである。


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