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世界のガソリンスタンド理論

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私は、世界の五つのガソリンスタンド理論を信じている。
そう、わたしは、現在の世界経済は、基本的にご種類のガソリンスタンドに置き換えられると信じている。

まず最初は、日本のガソリンスタンドだ。
ガソリンは一ガロンあたり5ドル。
制服を着て白い手袋をはめ、終身雇用契約を結んでいる男性が四人、あなたをお待ちしている。
彼らがガソリンを入れてくれる。
オイルも交換してくれる。
窓も拭いてくれて、あなたが気持ちよくスタンドを去るときには、親しげな笑顔を見せながら手を降ってくれる。


二番目は、アメリカのスタンド。
価格は一ガロンわずか1ドルだが、あなたは自分でガソリンを入れなくてはならない。
自分で窓を拭き、タイヤに空気を入れる。

そして、あなたが車で角を曲がる時には、四人のホームレスが車のホイールキャップを盗もうとする。

三番目は、西ヨーロッパのスタンド。
ここも、一ガロンあたり5ドルする。
店員は、男性がたったひとり、当番でいるだけだ。
彼は、しぶしぶガソリンを入れ、にこりともせずにオイルを交換するので、
あなたはいつも、給油とオイル交換だけが仕事だという、彼の組合協約のことを思い出す。
窓は拭いてもらえない。
店員は一週間に32時間しか働かず、しかも一日あたり90分の昼食休憩をもらい、
そのあいだ、スタンドは閉まっている。
それだけではなく、彼は毎年夏に6週間の休暇をもらって南フランスで過ごす。

通りの向こうでは、彼の弟ふたりと叔父が、ボッチェ(戸外で行う玉当てゲーム)に興じている。
三人は、この十年間働いていないのだが、それは、失業保険の額が、最後に働いていた時の収入よりも多いからだ。

四番目は、発展途上国のスタンド。
15人がそこで働いていて、全員が親類だ。
あなたが店にやってきても、誰も注意を払わず、全員がおしゃべりに熱中している。
ガソリンは、政府から補助金がでているので、1ガロンあたり35セントというやすさだが、
6つある給油機のうち、動くのはわずかにひとつだけ。
あとの5つは故障していて、ヨーロッパから航空便で交換部品が来るのを待っている状態だ。
ガソリンスタンドはかなりガタが来ているが、それはスタンドの所有者がチューリッヒに住んでいて、
利益を全て国外に持ち出していしまう
からだ。
所有者は、従業員の半数が夜は店に寝泊まりし、洗車道具を使ってシャワーを浴びていることを知らない。
発展途上国のスタンドに来る客の大半は、最新モデルのメルセデスか、スクーターに乗っている。
とはいえ、スタンドはいつも混んでいる。
実に多くの人が、自転車のタイヤに空気を入れるために、空気ポンプを使いに来るからだ。

最後は、共産主義国のガソリンスタンド。
ガソリンは一ガロンあたりわずか50セント。
ところが、店にガソリンはない。
四人の従業員が、闇市場で一ガロンあたり5ドルの値で、すっかり売り払ったせいだ。
スタンドには、四人のうち一人だけが来ている。
あとの三人は地下経済活動の副業で忙しく、週に一度だけ、給料支払小切手を受け取りにやってくる。


非常におおざっぱな感覚で言えば、現在世界で起こっていることは、グローバル化の過程の中で、誰も彼もが、アメリカのガソリンスタンドに向かわざるをえない、という現象だ。

レクサスとオリーブの木 トーマス・フリードマン より

ここまで
面白いが、最後の結論は近年では疑問を持たれている。


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