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私の実践経済学 高橋亀吉

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著者は戦前、東洋経済新報の経済記者で、戦後拓殖大学の教授になるなどしている。
著者の考えは、理論に囚われることなく、現実の経済の動向を見て判断する、という現実主義者

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経済は常に変動している。
その場合つねに注意しなければならぬことは、その変動を一時の「変態」とみるか、
構造的「変化」とみるか、ということである。
変態であるならそれは一時の異常現象に過ぎないから、
できるだけ早くこれを常態に戻さなければならない。
事実、常態に戻っていくのである。
この場合には経済理論や尺度には何らかの変化も起こらない。

ところが、それは変態ではなく、変化だということになると、
現時点におけるスタート時点での差異は微小でも、
その変化が発展する将来の時点では、その差異は極めて大きな開きになってしまう。

もし、変化であるなら、これを抑えてもいけないし、戻してもいけないのだ。
変化した方向に展開さすべきであり、その立場で診断し処方箋を書かねばならない。
その場合には当然、理論にも変化が起こる。
従来の理論では通用しなくなるのだ。

したがって、一つの問題が起こった時、それが変態なのか変化なのか、
これをいち早く見分ける着眼が非常に大切になってくる。

ーー中略ーー
変態であるならば極力早くもとに戻す。
理論の修正もする必要はないし、元の通りになると予想する。
変化であるなら、もとには戻らない。
もとに戻す政策ではなく、それに極力早く適応して、
それをさらに発展させる政策を取るべき
であり、
財界はその新事態に早く適応する努力が何よりも肝要となる。
理論自体もいちはやく、新事態に即して改革しなければならない。

===============

経済動向の見通しをたてようとするとき、必ずといってよいほど統計が使われる。
しかし、この場合に第一に留意すべきことは、統計というものはその性格上、
現実の経済の始動そのものよりも、早くとも2~3ヶ月、多くは半年以上も遅れて手に届くものだ

ということをしかと頭に入れておかねばならない、ということである。

たとえば、生産、在庫、受注、設備投資といったきわめて重要な統計でも、
集計されて発表されるまでに二ヶ月以上かかるのが普通である。
しかも、これらの経済現象そのものが数字となってあらわれる前に、
すでに経済行動は起こされているのであり、
さらにいえば、その行動以前に意思決定は行われているのである。



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