ペルーでは、水道水が原因でコレラが蔓延し、80万人が罹患し、7000人近くが死亡したという事件がありまいた。
1991年から92年にかけてです。
原因は水道水の塩素消毒をやめてしまったことにあります。
なぜ、水道水の塩素消毒をやめたかというと、米国環境保護局(EPA)が塩素処理によって生成する発がん性物質トリハロメタンなどを規制しようとしたことにあります。
そのことを知ったペルー政府が、発がん性物質によるリスクをゼロにしようと考え塩素消毒を中止していしまいました。
それによってコレラが蔓延し、多くの犠牲者が出ました。
ーー中略ーー
渡辺宏さんが発行している「安心?!食べ物情報」の469号(2008年11月2日)に次のような島嶼が掲載されています。
ペルー政府の失敗は、何を優先すべきかを示す事例として印象的です。この記事は、広く知られてほしいものと思います。じつは、堺市で起きたカイワレ大根を原因とする腸管出血性大腸菌O157も、教育委員会が、トリハロメタンに必要のない”おののき”を示し、事件から10年前に次亜塩素酸ナトリウムによる野菜等の消毒作業を取りやめていたのです。もし、カイワレ大根に対し次亜塩素酸ナトリウムによる消毒作業を行っていたら、あの事件は起きていなかった、3人の子供の命を失うことも無かったのにと悔やまれてなりません。堺市内34校のうち、1校だけは一人の患者も発生していませんでした。その学校では、栄養士の指示で、3時間水道水に浸漬していたのです。微量の残留塩素と大量の水による菌の希釈で発病に至らなかったことが追試験でも立証されています。規定の塩素消毒をしていたら、事件は起きていないと言えます。このことは、マスコミもあまり報道されていません。事件後は、また、次亜塩素酸ナトリウムを調理場にまき散らしているような状態です。冷静な科学的知識の徹底のむつかしさを思います。
ーー中略ーー
こういう計算(水道水の塩素消毒による発がん性リスクの計算などのこと。塩素消毒のリスクは10万人のうち13人)で、
10万人中1人とか10人という数値が出るものの、ここで使っているユニットリスクの値は、
仮定をたくさん入れて安全側測定値として出されているため、
現実のがんに係るリスクの数値よりは100倍位大きいと思ったほうがいいでしょう。
交通事故で1年間に5000人が死ぬとすれば、(中略)その生涯での交通事故の死亡リスクは3*10のマイナス3乗(1000人で3人)になります。
こういうような現実に起きたことから計算された数値は、まさに現実の数値ですが、
これと、化学物質による発がんリスクとして計算された値と比較する場合には、約100倍位の違いがあることに注意してください。
なぜ、100倍も違うのか、
それは、必ずしも予測できない分を、安全側測定という形で含ませているからです。
「食のリスク学」 中西準子 より