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大国の興亡 ポール・ケネディ

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西暦1500年からの経済・軍事の観点から見た欧米諸国を中心とした大国の興亡の歴史を紐解いている本

とても興味深いが、1993年の本で、原作は80年代なのだろうか
冷戦終結など当然書かれていないし、その後の中国の勃興についても甘すぎる
しょうがないといえばしょうがない

でも、第二次世界大戦前後ぐらいまではとても興味深い内容でした。

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T・S・アシュトン 「産業革命」より

今日、インドや中国の平原に住む人々は災害に苦しみ、飢えて、毎日彼らとともに重労働に励み、共に眠っている家畜と変わりのないような生活を送っている。
こんなアジア的な暮らしと機械化の遅れによる悲惨な状態は、産業革命を経ることなく人口ばかりが増大してしまった国の人々の多くに共通するものである。

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1860年頃はイギリスが相対的な意味で覇権の絶頂にあったときで、
世界の鉄の53%、石炭と亜炭の50%を算出し、
全世界の原綿のほぼ50%を消費していた。
「世界の人口の2%、ヨーロッパの人口の10%を占めるにすぎないイギリスが、
近代産業において世界の生産能力の40-45%、ヨーロッパのそれの55ー60%を所有していたとみられる」

のである。

1860年には近代的なエネルギー源(石炭、亜炭、石油)から生まれるエネルギーの消費量は、アメリカやプロイセン(ドイツ)の5倍、フランスの6倍、そしてロシアの155倍に達していた。
イギリスだけで世界の貿易の5分の1を占め、工業製品の貿易に限ればイギリスが5分の2を扱っていた。

世界の商船の3分の1はイギリス国旗を掲げており、しかもイギリス船籍をもつ船の数はますます増えていった。

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南北戦争

戦いの当初から、南部の経済力の弱さははっきりしていた。
1860年には、北部に製造業の事業所が11万もあったのに、南部には1万8000しかなかった(しかも、南部の事業所の多くは、北部の専門技術者や熟練労働者に頼っていた)。
南部同名の鋳物用銑鉄の生産高は3万6700トン、これに対してペンシルヴェニアだけでも58万トンの銑鉄を生産していた。
ニューヨーク州の工業生産高は3億ドルで、ヴァージニア、アラバマ、ルイジアナ、ミシシッピを合わせた生産高の4倍以上に達していた。


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1892年になってからやっと、ヨーロッパの大国がワシントン駐在の外交官の格を引き上げ、領事ではなく大使を常駐させるようになってアメリカは一等国の仲間入りをする。

19世紀はイギリスが圧倒的だったが、20世紀になりアメリカが圧倒的になったのがわかる


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第二次世界大戦後

アメリカ政府の金準備高は200億ドルで世界の総金準備高330億ドルの3分の2を占めていた。
さらに「・・・世界の工業生産の半分以上がアメリカで占められ、実際に世界のあらゆる種類の製品の3分の1を生産していた」

その結果、終戦時にはアメリカはどんな国もその足元にも及ばない最大の輸出国となり、
二、三年のちには世界の輸出量の3分の1を占めるに至った。
また、造船所の設備拡充により、世界の船舶総トン数の半分を保有するまでになっていた。
経済面で、世界はすでにアメリカの意のままだったのである。

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未来に起こることを把握する最良の方法は、過去に目を向けて、ここ5世紀の間の大国の興亡を振り返ることだろう。
本書の論点は、主として経済と技術の進展によって変化を促進するダイナミズムが存在したこと、そしてこのダイナミズムが社会構造、政治体制、軍事力および個々の国家や帝国に影響を及ぼしてきたということであった。

ーー中略ーー
本書の第二の主要な論点は、この不均等な経済成長のペースが、様々な国の軍事力や戦略上の相対的な地位に長期的かつ重大な影響を及ぼすことであった。

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21世紀に向けて、すべてとはいわないまでも、大半の統治機関が背負う困難な課題は、三面的なものである。
すなわち、国家的利益のために軍事的な安全保障(もしくは、それに代わるなんらかの実行可能な安全保障)をもたらすと同時に、
国民の社会経済的要求を満足させ、
さらに持続的な成長を保証しなければならないのだ。
ーー中略ーー
軍事支出と軍事的安全保障、社会と消費者のニーズ、そして成長のための投資が資源を求めて三つ巴の競争を展開するのだから、この緊張を解消する絶対に確実な解決法がないことはいうまでもあるまい。




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