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広島市とチェルノブイリにおける放射能被曝

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前回の続き

広島市の平均寿命を見てみましょう。(ここ
原爆の被害に遭ったにもかかわらず、男性は79.45歳で政令指定都市の中では4番目、女性は86.33歳で1番目となっており、いずれも全国平均を上回っています。(2005年)

「少なくとも」高線量被ばくが身体に悪いことは統計上確かだと言えるのに、
なぜ平均寿命がこれほど長いのでしょうか。

おそらく長崎市でも同じでしょうが、被爆者は医療を無料で受けられるようになっています。
今回のケースでは医療によるメリットが放射能によるデメリットを「統計上」上回っていることを示しています。

しかし、これは単純に 医療>放射能の影響 とはいえません。
それは放射能による被害は直接的なものだけではないからです。

たとえば、チェルノブイリの事故による周辺の住民は、
同様に医療を無料で受けられました。
それにもかかわらず、チェルノブイルの周辺住民の平均寿命は短くなっています。


広島とチェルノブイリの住民ではある一点で大きく異なります。
それは「放射能」についての前提知識です。

広島の原爆が落とされた時、私たちが知っていたのは
せいぜい「新型爆弾」ということぐらいであり、
当時は放射能について知っている人はほとんどおらず、
それがどれほど危険なのかも知らなかった。

しかし、チェルノブイリの事故が起こった際には、
原爆=放射能というある種の刷り込みもあり、
放射能に対する知識(偏ってはいるが)を近隣住民は持っていました。

それだけではありません。
チェルノブイリの事故が起きた後、政府は作物等に対する放射能の制限値を平時と同じにしました。
福島原発事故の時を思い返せば分かるように、いたるところで基準にひっかかる作物が現れ、周辺住民は大きな不安にかられました。
そして、医療を無料で提供し、ガンで死亡する患者はほとんどいなかったにも関わらず、
寿命が大きく下がってしまったのです。

ICRPはこれを受けて、非常時にはこの放射能の制限値を20-100ミリシーベルトに引き上げることに決定しました。
福島原発事故の後、政府が制限値を上げたのにはそれなりの根拠があったのです。
しかし、政府も官僚もまともな説明もなく(知りもしなかったのでしょう)、
また当時、私を含めた無知な国民も不安にかられ大きく騒ぎ立てました。
そして同様に無知なマスコミがそれを助長していきました。
このことが近隣住民に与えた不安はさぞかし大きかったものでしょう。

この前の選挙活動などを見ても、まだ近隣住民に不安を与えるようなことを行なっています。
大変残念ながら、福島原発周辺住民の(もっと広範囲かもしれないが)平均寿命は下がることでしょう。
ICRP、WHOの報告からわかるように、
住民に放射能によるガン発症はほとんど現れないだろうが、
私たち国民が与えたストレスが住民の精神を蝕んでしまっているからです。

10年後、20年後、私たちはその現実を重く受け止めなければならないだろう。
個人が勝手に不安に思うのは構わないのですが、
それを周りにむやみに発信するのは控えてほしいです。


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