日本の警察の美点

日本の警察　「安全神話」は終わったか　佐々淳行　より

日本の警察の伝統的な美点とは何か。
私は４つあると思います。

一つは、地域密着性が非常に強いこと。
その典型が交番や駐在所といった制度で、それを通じて地域の住民ときわめて密接な関係を持っている。

ーー中略ーー
二つ目は、制服・私服の一体運用です。
日本では、パトロールをしている制服警官が辞令をもらって私服の刑事になり、
また地位が上がると交番に戻るといったことが当たり前に行われています。
これは日本独特のやり方なのです。
他の国も制服・私服相互の関係がないわけではありませんが、少なくとも給与体系は別になっています。
最初から制服組は制服組、刑事は刑事として採用され、それぞれのなかで階級が上がっていくのが普通です。

ーー中略ーー
三つ目は抽象的な話になりますが、警察の精神的風土です。
日本の警察官は、伝統的にサムライ精神を持っていました。
そもそも明治維新に発足した時、ほとんどの警察官は武士の出身でした。

ーー中略ーー
最後に警察の伝統として挙げておきたいのは、少なくとも戦後は、国内治安を警察だけの力でやって来たという点です。
私たちはあたりまえだと思っていますが、軍の力を借りずに治安を守っている国は非常に少ない。
たとえばフランスでサミットが行われた場合、警備で街頭に立っているのは半分ぐらい軍人です。
天安門事件のような暴動が起これば、当然のように戦車が登場します。