上巻が主に政治思想についてであったのに対し、
下巻は経済について主に書かれていた。
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独占と聞けば直ちに望ましくないと断言するのは軽率である。
もちろん、古くからの多数意見は、「超過利潤」の不正を糾弾する独占否定論である。
ーー中略ーー
技術進歩の殆ど無い準停滞状況での独占と、
技術進歩に沸き立つ状況での独占とは全く性格を異にしている。
この2つの区別を強調したのは、よく知られているように、シュンペーターであって、
彼は独占論に新たな地平を拓いた。
彼の言うとおり、新技術を開発した企業がある程度平均水準を超過する利潤(たとえば特許料収入)を手にすることはまさに当然のプレミアムだし、
古い技術にこだわる企業が激しい投資競争・技術競争の中で脱落していくことにも資源配分を効率化する意味がある。
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(後発国への技術移転の)障害となるのは、実は「知的所有権」である。
もしも知的所有権といったものが一切なく、技術の拡散が完璧に行われれば、
各国の「生産関数」はおなじになり、古典的な自由貿易と開発主義を含む貿易とは一致する可能性が高まる。
ーー中略ーー
しかし同時に、多くの経済自由主義者は、発明の誘引を与えるためには「特許権」、
より広くは「知的所有権」を不可欠と考えている。
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さまざまの点で興味深いのは、インドネシア、マレーシア、フィリッピン、タイ、シンガポール、ブルネイの六カ国よりなるASEAN(東南アジア諸国連合)である。
ASEANは安全保障同盟ではない。
それどころか、ASEANは、設立条約もなしに(抽象的で曖昧な1967年のバンコク宣言によって)出発した不思議な連合体であって、
久しく国際法的地位も定かでないと見られてきた。
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反古典の政治経済学 下 二十一世紀への序説 村上泰亮
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