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町工場こそ日本の宝 橋本久義 岡野雅行

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町工場こそ日本の宝/PHP研究所
¥1,470
Amazon.co.jp
日本の製造業がなぜこの不況下でも優れているのか
日本の製造業が中小企業に支えられている
その理由の一端がこの本からわかります。
是非オススメ

<トヨタの復興チーム>
私の知り合いの工場が、阪神大震災で大被害を受けたんです。
そのときに真っ先にやってきたのが、トヨタの復興チームで、
手際よく工場の再開を助けてくれた。

さらに「俺たちは、あなたの工場を助けるために来たが、
本当は神戸の皆さん全部を助けたいんだ」と、
近所のトヨタの仕事を何もやっていない工場も援助して回った。
また、一般の被害者のために、水、食料品、生活用品はもとより、
女性の生理用品まで調達して配っていた。
しかも、「マスコミには、私たちのことは絶対内緒にしてほしい」
と固く口止めして帰ったらしいんです。
その社長さんたちは、4年も前の話だったのに話をしながら泣いていました。
私もついついもらい泣きをしてしまいました。

<通産省が果たした大きな役割>
日本ではライバル同士の勉強会ができるということが、不思議に思える。
どうしてそういうものができたか。

それは、良かれ悪しかれ、やっぱり通産省がリードをして、
少なくとも一時期には絶対的権威を持ってまとめ役になっていたからだ。
仲間同士ではなかなかできなくても、通産省は
「みんな仲良く勉強会をやりなさい」ということができる。
日本では通産省が、中小企業のレベルを高めるためにリーダーシップを、
しかも、ものすごく細かい分野でリーダーシップをとってきたということなのである。

通産省がライバル同士をうまくまとめられた理由をさらにさかのぼると、
戦時統制会に行き着くのかもしれない。
戦争のために、一つ一つの企業に頼むのも、面倒くさいから、
戦時統制会というのをつくらせて、生産の調整をやらせ、共同購入をやらせ、
いちばん効率よく国家のための軍用品ができるような体制を作った。
生産割当のようなことをやったのだ。
ーー中略ーー

戦争が終わって、その仕組が用済みになったかといえばそうではない。
戦争直後に、今度は配給というものがあった。
物資が少ないから、配給で割り当てていかなければいけない。
だけど、役所が直接やるというのはとても面倒くさい。
で、探してみたら戦時統制会というとても便利な同業組織があった。
それで、その同業組織を使って、お前さん達、ちゃんと仲間で相談してやりなさいと。
これだけしか物資がないからその仲間でちゃんと仲良く相談をして、
あなた方が自分で決めなさい。
そして、役所が決めたわけじゃないんだから、あなた方自身で責任をもってやりなさいよね、
となったのである。

<通産省のチャンピオン育成>
通産省の先輩は偉かったと私が思うのは、全国一律の「広く遍く、ともに貧しく」
という政策をやるのと同時に、チャンピオンを育成するということも
一生懸命やってきたことである。

たとえば、自動車産業でも部品屋さんが強くないといい自動車はつくれないから、
部品産業の育成をしましょうということを通産省が決めた。

これはとてもすごいことなのである。
他の国ではあんまりそういうことをやらなかった。
自動車産業そのものは育成しましょうと言ってはいたが、
部品屋さんを強くしましょうとはいわなかった。

そのときの基本的なやり方は、チャンピオン企業(複数)を決めて、
そこにものすごくいいものをつくらせるということだった。
ベアリングであればベアリングで、キャブレターであればキャブレターで、
ブレーキであればブレーキで、重点二社とか重点三社というのを決めた。
そして、そこがいいものをつくって、補助金も受けて、どんどん大きくなっていった。
そのどんどん大きくなった姿を見ながら、他の企業が、
あそこに負けるなということで一生懸命自分たちで設備投資をし、
研究開発をしていった
のである。

ーー中略ーー
それで日本の部品屋さんというのは、世界で名だたる部品産業となった。
こんなに小さな日本で、自動車産業がここまで発展できた大きな理由が、
機振法(機械工業振興臨時措置法)によって、
強い中小企業・部品供給者をつくり、日本産業全体を強くしていったことにあるのだと私は思う。

<「まごころ」あるかぎり、日本の製造業は滅びない>
たしかに、中国には立派な大企業があり、そこそこパフォーマンスはいい。
しかし、そこの部品は、日系企業に供給を仰がざるを得ない。
しかも、中国でやってる中国系企業であっても、
日本のアドバイザーがほころびを繕いながらやっていかないと、
なかなかうまく回って行かない。
そこが中国の限界、ということなのである。

日本の強みは、ちょっとはオリジナルだけど
大部分は手堅くまとめているような技術を駆使する大企業メーカー
と、
その分野についてだけ言えば、トヨタでもとてもかなわないような技術を持った
1000~2000人規模の中堅部品メーカー
と、
世の中で誰も考えつかないようなことを自分で開発する力を持った岡野さんのような人が、
それこそバランスよく配置されているというところであろう。

そして、材料問屋は材料問屋で、一生懸命努力をしている。
たいしてほかの材料屋と変わらないかもしれない。
でも、「お客さんが少しでも使いやすくなるように、
うちは少しでも安い値段で使いやすいものを提供してるんですよ」と、
そこに胸を張っているようなお店がたくさんある。

ーー中略ーー
岡野さんの力、それはある意味では、「ものづくりのまごころ」が生み出す力である。
日本には、その「まごころ」がある。
しかもしれは、長い歴史の中で、文化風土の中で、営々と培ってきたものだ。
まさに「ものづくりのDNA」とも呼ぶべき、極めて大きな財産なのである。


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