【2500円以上送料無料】しんがり 山一證券最後の12人/清武英利 |
著者は、元巨人のオーナー代行で、渡辺恒雄といざこざのあった人
山一證券が倒産したちょっと前から、会社の債務を清算していく過程で
何が原因で倒産したのかを調査し最後まで残った12人の元社員のお話
とてもおもしろかった
オリンパス事件と構造は同じで、
表に出せない負債・赤字を海外に「飛ばし」ていた。
この本によれば、この「飛ばし」を指南したのは当時の大蔵省の松野允彦証券局長だったようだ。
この局長、リーマン・ブラザーズの顧問になっていて、
リーマンショックの起きた直後、2008年11月に顧問を退職している。
2011年6月にはシティグループの特別顧問になっている。
うーーーん、国会でも飛ばしの示唆をしたことを認めているようだし、活動はもうやめてほしいですね。
そもそもなんでこの人を雇用し続けるんだろう。
当時の大蔵省の人間には家族に、山一が倒産することを伝え、株を事前に売らせていたようなことも書かれている。
本当だったらとんでもない
山一證券には、大蔵省やSESC(証券取引等監視委員会)が定期的に検査を行っていたのに、
なぜ簿外債務を発見できなかったのだろうか
最後まで調査に残った人たちは金にもならず、再就職を遅らせる(ある意味諦めていたかも)ことになる貧乏くじを引いていた。
なぜこのような仕事を引き受けたのか?という著者の質問に対する菊野晋次さんの回答
「自分の母親の介護だったらどうですかな。
損か得かはあまり考えず、子どもたちの誰かがやるでしょう。
どの会社も最期は誰かが看取ってきたんじゃ。
どんなサラリーマンにも、そんな気持ちは眠っているんですなあ」
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山一證券倒産時の社長、野澤が廃業が決まってから社員に
「どうしても廃業というのなら、再就職について協力してほしい。
なんとしても社員を助けて下さい!」
と言われた。
野澤は土星に圧倒され、目を伏せながらくぐもった声で言った。
「社員は悪くない。
それはわかっています。
一部の役員が悪いんです。」
とたんに、入社8年目の執行委員が泣きながら起ち上がった。
「社長!こんなところで、そんな話をしてもしょうがないです。
世間は社員が悪いと思っています。
社員が悪くないのであれば、公の場で言って欲しいんです」
これが、2日後の野澤の会見において泣きながら叫んだ
「社員は悪くありませんから!
悪いのは我々なんですから!
お願いします。
再就職できるようお願いします」
の発言につながる。
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当時の総会屋事件による不正のきっかけを作ったのは、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)だった。
1989年2月に小池に約32億円の無担保融資を実行し、小池はそれを元手に、
野村、大和、日興、そして山一という四大証券の株を30万株ずつ取得していった。
これで得た株主提案権を盾に、小池(小池隆一)は株主総会めがけて各社に揺さぶりをかけつつ利益提供を求めていたのだった。
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山一証券の最後の12人が調査した第一次報告書の冒頭には次のように記されていたという。
判定委員会は、法の前に謙虚でなければならず、従来の我が国企業の「常識」から見て
許されてきた行為であっても、法の観点から問題ありと認められれば有責と判定することに躊躇しない。
判定委員会は、「会社のため」という抗弁を認めない。
従来、我が国において、法に反する行為を行った者が、
「会社のための行為である」と抗弁した場合、
会社がその者の法的責任追及まで行わないのが通常であった。
しかし、このような法から乖離した企業内規範を持つこと(ダブルスタンダード)
が許される理由はない。
かかるダブルスタンダードに基づく行為は「市場」の厳しい制裁を招き、
企業の存立を危うくするからである。