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日本の財政 田中秀明

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著者は、元(?)財務省の官僚で学者
日本の財政制度の問題点、および官僚制度をどう変革したらよいか、提言している。



<シーリング、増分主義>
シーリング ceiling 天井

シーリングは、もともとは、1960年代の高度成長期に、大幅な税収増の中で
歳出の膨張を抑えるため、各省庁の要求に一定の枠をはめ、
さらにその枠の中で予算や施策の改廃を行うことを目的としていたものである。
1960年代当初のシーリングは、前年度予算の50%増、30%増といったものであった。

シーリングの基本は、前年度の予算を一律の伸び率で伸ばす、いわゆる増分主義にある。
(中略)
経済成長が鈍化してからは、「ゼロ・シーリング」「マイナス・シーリング」が適用され、
予算編成は、このシーリングの枠の中に各省庁の予算を抑えこむ作業に変わる。
ーー中略ーー

シーリングに対する第一の批判は、シーリングは増分主義をベースとしており、
省庁間の予算シェアを固定化させ、施策の優先順位に基づき
各省庁の枠を超えてスクラップ・アンド・ビルドを行うものではないことである。
ーー中略ーー

第二の批判は、シーリングは一般会計の当初予算のみを対象とするため、
当初予算に計上すべき歳出を補正予算に計上する、特別会計へ財政赤字を移転させるなど、
会計上の操作を誘発することである。

また、一般会計の全ての歳出が対象となるわけではなく、例外も多い。
こうした措置により、結局、予算制度の信頼性は低下するのである。

<政策判断を歪める当初予算の比較>
一年も前の当初予算と比べることがどれだけ意味があるだろうか。
ーー中略ーー
問題は、拡張的か緊縮的かではなく、政府がいかなる財政政策上の意図を持って予算を編成したかである。
実体経済に影響をあたえるのは決算ベースの規模なので、
新年度当初予算は、決算と比較して評価すべきである。
ただし、12月の時点では進行年度の決算は判明しないので、同時点での決算見込みの計数を使うことになる。

前年度当初予算比と前年度決算比が乖離している最大の原因は補正予算である。
債務残高が急増した1990年代は、補正予算は20回、年平均二回編成された。

<日本の中期財政フレーム>
中期財政フレームとは、単年度ではなく、数年にわたっての財政計画を立てる上での枠組み・ルールを意味する。

日本で中期財政フレームに相当するのは、
財務省が作成する後年度影響試算と
内閣府が作成する内閣府試算
の2つである。
財政を中期的視野でコントロールするという目的に照らし
他国の中期財政フレームと比較すると、両者ともに問題がある。

第一に、後年度影響試算及び内閣府試算ともに、その名将が語るように、
「試算」にすぎず、将来の歳出を拘束していない。
(中略)
日本のフレームには、注書きで、わざわざ将来の予算を拘束しない趣旨のことが書かれているが、これは矛盾している。
財政再建とは、将来を拘束することと同義であるが、政府は拘束しないと断っているわけだ。
ーー中略ーー
第二に、結果についての検証がないことである。
中期財政フレームにおける将来の歳入歳出は「予測」、「見積」、「推計」であり、
通常は、実績とは異なる。
たとえば、失業手当に要する歳出は、経済成長率や失業率が予測より乖離すれば、当然変動する。
予測は外的な要因により影響をうけるため難しいが、より正確な予測を行うよう努力するべきである。
(中略)
加えてより重要な事は、実績と比べて予測がなぜ乖離したかを説明することである。

<ガーディアンとスペンダーの戦い>
財政規律がうまく働かない理由の一つ

財務省主計局と自民党の間、主計局と各省庁の間、
言い換えれば予算を査定する「ガーディアン」と予算を要求する「スペンダー」の間における
情報の非対称性から生じる特殊な関係である。

主計局が予算を削減しようと思っても、各省庁はその必要性を主張し、
あるいは関係議員や利益団体が強く抵抗すると言って削減には応じない。
各省庁は予算や事務事業の中身を熟知し、どこに無駄があるかを知っていても、
主計局には伝えない。



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