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プロジェクトX18 勝者たちの羅針盤

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勝者たちの羅針盤 (プロジェクトX挑戦者たち)/NHK出版
¥1,836
Amazon.co.jp


同テレビ番組の書籍版

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海底ケーブルの話

知れば知るほど、敷設という作業は奥深いものに思えた。
ただ単に海にケーブルを落としていけばよいというものではない。
硬い岩場ではケーブルを傷つけるので、砂地を選んでルートを決める。
海底の凸凹を無視して敷くと、ケーブルが宙吊りになって傷つくおそれがある。
海図と計算尺で海底の起伏を計算し、ケーブルを海に繰り出す速さを調節する。

ーー中略ーー
新納はまず、深海でケーブルにかかる水圧を調べた。
太平洋の最深部はなんと1万メートル。
受ける圧力は1000気圧。
あの6500メートルまで潜れる潜水調査船「しんかい6500」よりもはるかに深い場所に、
繊細なガラスを設置するのだ。

親指の爪の上に小型乗用車が一台乗っかる計算です。途方も無い圧力です」(新納)
新納は、日本で唯一の海底ケーブル製造会社「日本大洋海底電線(現・OCC)」の技術者、
舟木靖に相談を持ちかけた。
舟木はその困難さを、こう証言する。
「当時、社内報で光ファイバーの研究を報じるために、広報の女性が来たんです。
長い爪でファイバーを触った途端、ポキンと折れてしまったんです。
これは情けなかった。こんなもの海底で実用化できるわけはない、という声が社内から聞こえてきましたよ」

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日本の国産OS トロン

ソフトウェアの業界団体「ADAPSO」は、日本の業界で起こっていることについて、リサーチを行った。
ADAPSOからの依頼により、リポート「日本のソフトウェア 次の野心的挑戦」をまとめた
弁護士のトーマス・ハウエルは、当時の状況をこう語った。
「私たちは、過度に警戒していました。
それは、アメリカの産業界の他の分野で、すでに重大な障害となる問題が起こっていたからです。
半導体、半導体製造機、光学、電子、通信機器などの主要分野で、日本は突然、
アメリカの前に躍り出て、激しい競争を繰り広げた末に逆転していきました。
そのプロセスの一部いえ大部分が、
政府の資金援助を受けた産業界と政府共同の研究開発プロジェクトによるもので、
アメリカ国内ではそこに大きな注目が集まっていたのです。」
ハウエルがまとめたリポートには、次のような一文が記されていた。
「トロンをベースとした標準化が日本で進めば、ソフトウェアとコンピュータ設計における日本のアメリカ依存は終止符を打ち、アメリカ企業が日本のコンピュータとソフトウェア市場に入り込むことがより難しくなる

ーー中略ーー
まもなく、新聞の一面に「トロン」の文字が踊った。
「OSに国産『トロン』採用」
不公正な貿易障壁の疑いをかけられ、世の中で『失敗』の烙印を押されてから、10年が経っていた。
これまでネジやクギと同じように、人の役に立ちながらも決して表舞台に上がることが出来なかったトロンが、初めて脚光を浴びた。

それだけではなかった。

いつの間にか、トロンを使った電子機器が街の中にあふれていた。
女子高生もビジネスマンも、あらゆる人にとって手放せないものとなった携帯電話。
世界ではじめて、インターネットをつながり、爆発的なヒット商品となった”iモード"。
それはトロンで動いていた。
二年で2000万台、1日平均なんと2万7000台も売れ、iモードの年間発売数はパソコンを抜いた。

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