昭和の数学者、岡潔さん
非常に文才があって、今までいくつか読んでいますが、とても面白いです。
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小我観のよい例は日本国憲法の前文である。
小我が個人であることが万代不易の真理だと明記している。
そしてその上に永遠の理想を、しかも法律的にであろうと思うが、建てることができるといっている。
なんという荒唐無稽な主張であろう。
こんな前文を見せられては、新法律体系はとうてい見る気になれない。
しかし見なくてもたいてい想像がつく。
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この国の人たちは今科学、科学とやかましくいいながら、
実は皆アリストテレスのファン(ひいき)であって、
科学するとはどうすることかを、
直接ガリレオやアインシュタインに学ぼうとは決してしないのである。
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新しく来た人たちはこのくにのことをよく知らないらしいから、一度説明しておきたい。
このくにで善行といえば少しも打算を伴わない行為のことである。
たとえば橘媛命(たちばなひめのみこと)が、ちゅうちょなく荒海に飛び込まれたことや
菟道稚郎子命(うじのわきいらつこのみこと)がさっさと自殺してしまわれたのや、
楠木正行たちが四条畷(しじょうなわて)の花と散り去ったのがそれであって、
私達はこういった先人たちの行為をこの上なく美しいと見ているのである。
《講談社》岡潔思想との対話2 日本のこころ 【中古】afb |