Quantcast
Channel: 読書は心の栄養
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1745

レンタルチャイルド

$
0
0

レンタルチャイルド・ビジネスを取材していた時に、とても印象深い話を聞きました。
女性の物乞いたちの間に広がっていた真実とも噂ともつかない話です。

ムンバイの町に、スルタナという年老いた女性の物乞いがいたそうです。
彼女は生後数ヶ月の女の子の赤子を借りて、物乞いをして暮らしていました。
ずっと赤子と一緒に暮らして、儲かった分から借り賃を毎日支払っていたので、
実質赤子につきっきりの生活でした。
スルタナは次第にその赤子を溺愛するようになりました。
もともと彼女は不妊症で子供を授かることができず、
それを理由に家庭内暴力を受けて夫から追い出され、物乞いになった過去がありました。
だから、人一倍レンタルチャイルドをかわいがり、我が子のように大切に育てていたのです。

六年が経ち、赤子は女の子になりました。
すると、犯罪組織のマフィアがやってきて、スルタナに子供を返すように命じました。
いまのうちに売春宿へ売って雑用をさせ、ゆくゆくは売春婦にさせようとしたのです。
スルタナは彼女を我が子同然にかわいがっていましたから手放すことができませんでした。
娘も行きたくないと泣き出します。
そこで二人は逃亡を図ることにしました。
しかし年老いた物乞いの行先なんてたかが知れています。
マフィアはすぐに二人を捕まえ、スルタナを殺害し、娘を売春宿に売りました。
娘は悲しみのあまり三日後に自ら命を絶ってしまいました。
やがてこの事件はムンバイの女性の物乞いたちの間に広がりました。
それを聞いて以降、ムンバイの女性の物乞いたちは赤子をレンタルするときは
愛情が移らないように数カ月おきに子供を取り替えることになった
のだそうです。

絶対貧困」 石井光太より


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1745

Trending Articles