天然だから安全、自然だから安全という安易な考えに警鐘を鳴らす本
おススメです
数学とか全くないので、文系でも苦もなく読めるでしょう。
命を奪う可能性のある行動や物品を、あぶないものから順に30個並べたもの。
化学肥料や合成殺虫剤を使わない有機食品は、環境運動という大義名分のもと、科学をあまり知らない人たちが推進している。
まさに日の出の勢いで、米国国内の年商は45億ドルを超す。
高価なのに喜んで買う消費者も多い。
自然なら安全、健康にも環境にも優しいと思うからだ。
高価なら質も良い、という幻想もある。
利点はたったひとつしかない。
普通の果物は青いうちに収穫し、植物ホルモン(エチレン)を作用させて熟させるのに、
有機栽培では完熟品を収穫するので味がいいところ。
だが天然肥料をつかう勇気作物は、ふつうの栽培作物よりもあぶない。
家畜の糞尿に入っていた細菌が汚染しやすいのだ。
米国防疫センター(CDC)によると、残留農薬で死んだ人はゼロなのに、天然物由来の食中毒で年に何百人もが命を落とす。
大腸菌O-157の汚染だけで二万人が倒れ、250人が亡くなる。
有機食品だけ食べる人は、そうでない人に比べてO-157の感染率が8倍も高い。
また有機食品は、アフラトキシンなど天然毒素やアレルゲンを含む率が高い。
環境運動に遠慮してか、CDCも政府の他機関も、有機食品のリスクを論じたがらない。
まあ、有機食品が食品全体のごく一部しか占めないのは救いだけれど。
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一部の大物議員が、有権者のご機嫌をとろうとして、天然治療薬を推奨するのだ。
オリン・ハッチ上院議員が提案し、1994年に制定された栄養補助食品健康教育法により、
栄養補助食品に対する政府規制が制限された。
これでハーブ薬は、分類が薬から栄養補助食品に変わってFDAの管轄から外れ、
病気・症状の予防や治療に効くなどという表示もできなくなった。
米国の連邦政府は栄養補助食品の品質管理をしていない。
とはいえFDAは、「合法」必ずしも「安全」ではない、と警告した。
ハーブ製品やミネラル、ビタミン、ホルモン剤などが、処方薬や大衆薬に適用される厳しい規格に従って製造されることは先ずない。
ドイツでは事情が違い、ハーブ薬も徹底的に研究され、ハーブの栽培・収穫からハーブ薬の加工まで政府が管理する。
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葉酸欠乏が原因で、新生児ほぼ1000人にひとりが神経管欠損症という出生奇形になる。
妊娠をきづきにくい二周目までに発症するけれど、六週目までに葉酸入り補助食品をとれば防げる。
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DNAの傷は、専用の酵素がいつも見回って修復している。
しかしそういう酵素といえども、放射線や物質にやられる恐れがゼロではない。
年をとるにつれ、修復されなかった傷がたまっていく。
高齢のラットを調べたら、DNAの分子に20万箇所も傷があったという。
マウスやラットのような小動物はヒトに比べてDNAが傷みやすい。
寿命が短い原因の一つはそれだろう。
ひところ「癌死が急増中」という噂が流れ、農薬や「環境ホルモン」といった合成物質に疑いの目を向ける人がいた。
しかし人口と年齢構成、喫煙の影響などを考え合わせると、肺がんを除き、
米国の癌死率は1950年から現在までに14%も低下しているとわかった。
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無害なCO2も、高濃度なら命にかかわる。
1986年にはアフリカ・カメルーンのニオス湖から大量のCO2が噴き出て、
多くの住民と家畜が窒息死した。
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メディアがほとんど言わないポイントを一つ指摘しておこう。
大気中のCO2はもう充分に多くて、吸収効率も「飽和」に近いため、
これから濃度が上がっても温室効果はほんの少ししか増えない。
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