徳富蘇峰は、明治から昭和にかけての著名なジャーナリスト
彼による吉田松陰の本で、最初は伝記かとおもいきや、中身は徳富蘇峰による吉田松陰を中心とした当時の歴史に対する論評に近いものがある。
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彼(吉田松陰)は教育家としては、多くの欠点あるべし。
彼が主観的にして、客観的ならざる、
彼が一角的にして多角的ならざる、
彼が情感に長じて、冷理に短なる、
胸中今日多くして明日少なき、
これみな欠点の重なるものなるべし。
かれは教育家としては実に性急の教育家なり。
何となれば、彼は卵を孵化し、これを養い、以って鶏と成さんとする者に非ず。
卵は卵の儘にてその功を為すべし、雛は雛の儘にてその功を為すべし、
時機に依れば、彼れ自ら卵を煮、雛を炙るも、以ってさらに意と為さざればなり。
然れどもこれを以って、彼を残忍なりというなかれ。
彼が自ら処するまたかくの如きのみ、彼は弾丸の如し、ただ直進するのみ。
彼は火薬の如し、自ら焚いて而して物を焚く。
彼は毎に身を以て物に先んず。
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彼は如何なる人物なるか、普通の意味において、大なる人物という能わず。
何となれば大なる活眼なく、大なる雄腕なく、また大なる常識を有せざるが故に。
然れどももし大なる人物というを許さば、許すべきはただ一あり。
曰く、彼は真誠の人なり、仮作の人にあらざるなり。
彼による吉田松陰の本で、最初は伝記かとおもいきや、中身は徳富蘇峰による吉田松陰を中心とした当時の歴史に対する論評に近いものがある。
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彼(吉田松陰)は教育家としては、多くの欠点あるべし。
彼が主観的にして、客観的ならざる、
彼が一角的にして多角的ならざる、
彼が情感に長じて、冷理に短なる、
胸中今日多くして明日少なき、
これみな欠点の重なるものなるべし。
かれは教育家としては実に性急の教育家なり。
何となれば、彼は卵を孵化し、これを養い、以って鶏と成さんとする者に非ず。
卵は卵の儘にてその功を為すべし、雛は雛の儘にてその功を為すべし、
時機に依れば、彼れ自ら卵を煮、雛を炙るも、以ってさらに意と為さざればなり。
然れどもこれを以って、彼を残忍なりというなかれ。
彼が自ら処するまたかくの如きのみ、彼は弾丸の如し、ただ直進するのみ。
彼は火薬の如し、自ら焚いて而して物を焚く。
彼は毎に身を以て物に先んず。
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彼は如何なる人物なるか、普通の意味において、大なる人物という能わず。
何となれば大なる活眼なく、大なる雄腕なく、また大なる常識を有せざるが故に。
然れどももし大なる人物というを許さば、許すべきはただ一あり。
曰く、彼は真誠の人なり、仮作の人にあらざるなり。
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