日露戦争のバルチック艦隊に乗っていたアレクセイ・ノビコフ・プリボイの体験記
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日本側は、我が方に向かって、驚くべき強力な火薬を充填した榴弾をぶっ放してきた。
これは飛んでくる水雷そのものだった。
彼等にとっては、我が方との距離が遠くなるということは、要するに射撃の命中率が少なくなるというだけのことで、別にその破壊行動が減少するなどということは少しもなかった。
なるほど、敵の砲弾は命中しても装甲帯を貫通するようなことはなかったが、しかし、その代わりに艦上架造物を根こそぎ破壊し、器具類を粉砕し、火災を引き起こし、大砲や乗組員の戦闘力を奪い去ってしまうのだった。
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私は戦艦「朝日」の中を見て、その優れた建造ぶりにすっかり驚いた。
優れた機械技術のあらゆる最近の要求に応じていた。
われわれの艦の負担を重くし、戦闘意義を弱くしていた無駄な余裕が、「朝日」にはなかった。
すべてのものが簡素に出来上がっていて、いろいろ工夫した贅沢な飾り付けや、上甲板の木造の建造物などは一つもなかった。
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日本海海戦で敗北し、捕虜となった著者
私は日本人には吃驚した。
男でも女でも、悲しげな顔や気むずかしい顔をした日本人に、ただの一度もあったことはない。
まるで日本人全部の生活が申し分なく、みんなが国家組織や、お互い同士や、自分の社会的地位に満足しているので、いつも人生を楽しんでいる、とった風に見えた。
ところが実際は、日本人は貧しい生活をしているのだが、殊更それを隠していたのだ。
日本人が数世紀の間に鍛え上げられた並外れの礼儀と親切心とから推して、彼等は自分が世界においてもっとも平和な国民のつもりでいる、と想像する者がいたら、これもまた同じように間違いに違いない。
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