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ガラスの地球を救え 手塚治虫 

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谷山雄二朗さんの「F.U.C.K, I LOVE JAPAN!」 で参照されていた本

手塚治虫といえば、漫画の神様ですが、
こうしたエッセイというか本を書くこともあるんだと初めて知りました。

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思えば、「鉄腕アトム」を描き始めた昭和二十六、七年ころは、
ものすごい批判が教育者や父母から集中し、
「日本に高速列車や高速道路なんて造れるはずがない」とか、
「ロボットなんてできっこない」とか、「荒唐無稽だ」などと大いに怒られ、
「手塚はデタラメを描く、子供たちの敵だ」とまで言われたほどでした。

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ぼくが、その日、工場の監視塔でずっと見張りを続けていたら、二時頃いきなり空襲警報が発令されたのです。
普通は空襲警報のサイレンが鳴る前にかならず警戒警報というのがあるのですが、
その日は、いきなり空襲警報です。
あのサイレンは、死のムードがあるというか、まったくいやな音でした。
ーー中略ーー
彼等は爆弾と同時に、焼夷弾をばらまいていきます。
ーー中略ーー
大きな筒が落ちる途中でパッと裂けて、そこから無数の焼夷弾が四方八方にパーッと飛び散り、民家に落下します。
焼夷弾といっても、直撃を食らえば、人間の脳店から足下まで突き抜けるぐらいの勢いで落ちてくるのです。
これが降ってくるのを遠くから眺めると、花火の粉が落ちるようにチリチリと光って、恐ろしくも美しいショーのように見えます。
近くへ落ちるときには、雨でも降るようなザーッという音が上で聞こえます。
そして真上から降り注ぐ時は、むしろ、キューンという金属音がするのです。
しかしその一瞬あとは自分がやられるのです。
監視塔の上で、キューンと鳴った時、ああこれでぼくは駄目だ、と思いました。
そして、思わず頭を抱えてうずくまりました。
一秒後、ぼくのからだのすぐ横を、焼夷弾の束が大の板を突き抜けて落ちていきました。
どんな音がしたか記憶なんてありません。
なにしろ、死ぬと思い込んでいたのですから。

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NBCの国際部長に会うと、
「たいへん子どもが夢中になっている。
鉄腕アトムをアストロボーイと名づけたのは、じつはうちの子どもなんだ。
名前を変えたんだ。
アストロボーイはたいへんいい名だ。」
なんて自画自賛するわけです。
「なんで、アトムじゃいけないんですか」
と聞くと、アトムはスラングでおならの意味だと言うんです。
それは知らなかったと大笑いになりました。

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最近、モントリオールの空港のレストランで半分セルフサービスで、
順番にずらっと並んでいると、料理をわたしてくれる女性がいるんですが、
ぼくの番なのに無視してあとの客の注文を聞くのです。
ぼくが怒りだして、その料理がほしいのだと言っても、目の前に見本があるのに、ありませんという。
他の料理を頼んでも、もう全部ありませんと言うのです。
ところが、次の人には同じ料理を渡している。
その係の女性は黒人でした。(略)黒人のアメリカ人にしろ、カナダ人にしろ
黄色人種に対しては、やはり偏見を持っているんだと思わざるを得ませんでした。
(略)差別されたものが、今度は自分が差別できる対象を見つけようとするのは、
打ち砕かれてきた自分の尊厳、誇りを何とかして無意識のうちにも回復させたいと願うからでしょう。



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