前回の続き
第19巻では第4代皇帝クラウディウス、第20巻では悪名高き第5代皇帝ネロが登場する。
クラウディウスは、ガリア中部のケルト民族に信仰されていたドゥルイデス教が気に食わなかった。
信仰自体には問題なかったが、宗教団体が司法などに支配的で、
ローマ帝国の法が及ばなかったから
クラウディウスは、ガリア諸部族の長にローマ市民権を与え、長には昔から部族の支配権を与えていたことから、
ローマ法の影響下に置くことに成功した。
ドゥルイデス教の司祭は司法権を手放しただけでなく、教育権を奪われることになる。
地域には高等教育機関が設置され、その影響で初等教育でも教育の内容が宗教よりも実際に役立つ読み書き算盤が主体になったためだ。
こうしてドゥルイデス教は影響を弱めていった。
クラウディウスは50頃に再婚したが、その女性はアグリッピーナと言い、姪だった。
彼女こそが悪名高きネロの母親です。
アグリッピーナは結婚する否や「Augusta(アウグスタ)」の地位に昇格させ、
「皇帝」を意味する女性の称号を得た。
ネロはクラウディウスの子ではなく、アグリッピーナの前の夫の子どもであったが、
アグリッピーナはクラウディウスを巧みに操り、ネロを皇太子にしてしまう。
クラウディウスには自分の血を引く子どもが二人(男一人、女一人)いたのにかかわらずである。
クラウディウスは、アグリッピーナに毒殺された、という話もある
20巻は、このアグリッピーナの息子で第5代皇帝ネロのお話だが、
ネロはこの母親アグリッピーナを殺したとされている。
また、最初の嫁さんの弟も殺したとされている。
最初の奥さんは先代皇帝クラウディウスの娘であったため、
その弟自身も皇帝継承権があった。
ネロは母親のアグリッピーナに指示されるのに嫌気がさし、度々反撥して喧嘩が絶えなかった。
とうとう、アグリッピーナがキレて奥さんのオクタヴィアの弟であるブリタニクスを皇帝にする、という言葉が出ると、
ネロは自らの地位を脅かす、と恐怖に駆られ、ブリタニクスを殺したとされている。
その後、ネロは新たに好きになった女性を正妻にしようとするが、オクタヴィアと離婚することにアグリッピーナが大反対する。
これは、オクタヴィアと離婚することでネロの皇帝としての正統性が失われる、という考えからだった。
強行するためにネロは母親を殺すことを決め、部下に命じて母親のアグリッピーナを船で送り、船を沈没させる。
しかし、アグリッピーナは泳ぎの達人だったため、死ぬことはなかった。
作戦が失敗したことを知ったネロは、この作戦を実行した奴隷を「ネロ殺害計画」のかど(当然、捏造)で殺し、彼に命令した(当然、捏造)アグリッピーナも刺殺した。
ネロは政治家としても手腕はひどいとされていて、
ローマ帝国各地で非難轟々だった。
ガリア人ヴィンデックスは不適格なネロを皇帝から退位させるべきだと檄を飛ばし、
反乱を起こし、結果としてネロは地位を追われ、結果としてネロは自死することになる。
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ヴィンデックスの檄
「ネロは帝国を私物化し、帝国の最高責任者とは思えない蛮行の数々に酔いしれている。
母を殺し、帝国の有能な人材までも国家反逆の罪をかぶせて殺した。
そのうえ、歌手に身をやつし、下手な竪琴と歌を披露しては嬉しがっている。
帝国ローマの指導者にはふさわしくないこのような人物は、一刻も早く退位させるべきであり、
それによって、われわれガリア人を、そしてローマ人を、いや帝国全体を救うべきである」
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