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日本に国家戦略はあるのか 本田優

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著者は朝日新聞の外交・安保担当の編集委員。

歴史観はあまり私と合わないように思えるが、現実主義者、リアリストとして物事を見ているので好感が持てる。
いい本だと思います。
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外務官僚や防衛官僚からは「国家戦略を考えることは必要だと思うが、日々の仕事に追われて忙しくてねえ・・・」という答が返ってくることが多かった。

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日本の最大の失敗は、その一年前にジョージ・ブッシュ米大統領とミハイル・ゴルバチョフ・ソ連最高会議議長がマルタ島で握手し、米ソ冷戦が終わった時に、
その意味を十分に把握できていなかったことだろう。
冷戦後の世界の政治構造はどうなるのか。
日本はその中でどういう役割を担うべきなのか。
それは国家戦略上の大課題だったのだが、その検討を怠っていた。


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岡本行夫氏(元外務省で、橋本内閣首相補佐官、小泉内閣内閣官房参与)はのちに
ニュースキャスター田原総一朗氏との対談で、次のように明かしている。

「冷戦時代というのは、アメリカとソ連の間で、一方が得することは他方の損になるというゼロサムの時代。
だから、アメリカが何をしようと、それを基本的に『是』として受け入れる。
ソ連が何をしようと、それを基本的に『非』として退ける。
このやり方はいちいち立ち止まって考える必要がなく、簡単だった。
日本の戦略的利益とは何かと、突き詰めて議論する必要がなかった。」

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佐久間一・元統合幕僚会議議長

「日本は戦後50年近く安全保障で『閉鎖空間』の中にいたと思います。
なぜかというと、東西対立の中で政府は西側陣営の一員だということをわかっていながら、
『仮想敵国はない』とか『全方位外交』ということを言ってきたでしょう。

国民が本当の自分たちの安全を考えないですむような環境を作ってきた。
その『閉鎖空間』が壊されたのが、冷戦終結であり、湾岸戦争だったと思います。」

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日本は外務省がすべての外交をやる。
外務省は二言目には『外交の一元化』というでしょう。
しかし、『外交の一元化』とは、その国の指導者のもとに一元化されるということであって、
外務省のもとに一元化されるということではないはずだ。


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日本が経済大国となった1980年代から、外交は外務省一省の手におえるものではなくなっていたからだ。
現実に、国際金融外交は大蔵省(現在の財務省)、
通商外交は通産省(現在の経済産業省)
が主導していた。
そのすべてを統合・調整する力は外務省にない。



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