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セブン・シスターズ 下巻 不死身の国際石油資本 アンソニーサンプソン

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セブン・シスターズ―不死身の国際石油資本 (下) (講談社文庫)/講談社
¥399
Amazon.co.jp
下巻は、OPEC設立移行、オイルショック後ぐらいまでを対象としている。
戦後以降、明らかに石油会社はバックとなる政府を利用しながらも、
国益を気にしないようになってきている。
つまり、自社の社益、あるいはオイルメジャーの利益を追求するようになってきている。
そして、最終的にはオイルメジャーはOPECとも協力あるいは結託するようにもなる。

1967年6月4日、イスラエルはエジプトに進攻した。
ナセル大統領(エジプト)はただちに、イスラエルがイギリスとアメリカの支援を受けている
との声明を発し、アラブ諸国の外相会議が開かれた。
たった三週間前、ロンドンでイギリス政府首脳と
ナセルの侵略の脅威を話し合ったばかりのサウジアラビアのファイサル国王も、
難局に立つアラブの兄弟を支援する方針を固めた。
イラクが先頭になって、アラブ諸国は油井を閉鎖し、
西側帝国主義者に対する石油供給をボイコットするとの合意に達した。
戦争は、アラブ統一の重大なきっかけを与えたかのように見えた。

しかし、それは長続きしなかった。
産油国は、供給ボイコットで損するのはほかならぬ自分たちだけだ
ということにすぐ気がついたのである。
OPECの2大メンバー国のイランとベネズエラにボイコット参加の意志が全くなく、
ボイコットによって生じた石油不足で、かえって両国だけがもうける結果になったからである。

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中東諸国は、販売収入の取り分を増やそうと努力を続けていく。

1972年6月、イラクはついに一方的にこのコンソーシアム、IPCを国有化したが、
その直後、フランスの石油会社CFPと協定して、
国有化した石油会社からCFPが通常持分の原油をとってもよいと合意した。
イラクは石油不足を利用して、いまやセブン・シスターズの七大石油会社と
フランスを互いに反目させることができるようになったのである。

「モサデク(イラン)がどうなったかみるがいい」といったかつての脅し文句は、
国有化された会社が自力で操業できる能力を示すに至って、もはや通用しなくなったわけだ。

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クウェートでは、その豊かな富と生活様式との関係に理解できない点が特に多い。
他のアラブ諸国と違って、国土の狭いこの国はこれまで20年間、
石油からあがる豊かな富をエンジョイしてきたが、
国民一人あたり所得は依然としてヨーロッパ諸国の6分の1にすぎない。
クウェート人自身は年間3000ドルの所得を保障されているが、
国民の大多数を占めるクウェート人以外のアラブ移民たちは市外の掘っ立て小屋に住んで、
食うや食わずのスレスレの生活をしているように見受けられる。

ーー中略ーー
アラブ装束をした通行人を見ただけでは、
彼らが乞食なのか億万長者なのかを見分けることは困難である。

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原油価格は多少の値引きや延払などを認めるところがあっても、
基本的にはOPECが設定した線から崩れることがなかった。
サウジアラビア、クウェートおよびリビアを中心に、主要産油諸国がやったことといえば
生産を削減して石油を地中に残しておくことだけだった。
OPECカルテルは依然、がっちり維持されていたのである。

どうしてこういうことになったのか?
その鍵を握っていたのはサウジアラビアだった。
ヤマニが予言していたように、主要産油国の多くは余剰資金を必要とせず、
したがって通常の商業的カルテルにありがちな、
競争相手を蹴落とすための値引き競争には、およそ関心を示さなかったのである。
生産規模では断然トップのサウジアラビアはこのときすでに、
かつてテキサスが演じた役割を果たしていたといえる。
すなわち価格を高く維持するために、いつでも生産を増減できる体制をとっていたのだ。

しかし、こうしたバランスを取る過程が苦しみを伴わずに可能になったのは、
やがで次第に明らかになるように、実際には石油会社側が
各国の生産割当の仕事をやってくれていた
からだった。
OPECの加盟国は自分たちでは生産割当制度の仕組みについて
依然合意することができなかったが、それは毎度おなじみの理由からであると言えた。
つまり、生産制限の基準をどうするかが彼らには決められないのである。
ところが、石油会社側は1960年代に産油諸国に、また禁輸のときに消費諸国に、
それぞれみごとに実績を示したことでも明らかなように、
供給割当という点ではすでに名人と言ってよかった。
石油会社は全世界的なバランスを円滑にとっていく仕事を依然としてやっていたが、
その目的はいまや石油価格を安く押さえておくことではなく、
高い水準を維持することに変わっていた。


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