この本は、河上清というアメリカで働いた日本のジャーナリストの生涯を描いた作品
河上清は日本にいたときは、万朝報に属し、
幸徳秋水などと親交があり、当時の資本主義の弊害について強く主張していたため、
政府に監視されていた。
そこから逃れるのと、アメリカの大学から誘いがあったことから渡米する。
その渡米資金が足りなかったので、後藤新平などから資金をもらったりしていた。
後藤新平は政府側の人間なのに、考えが異なる人間にポンと大金を与えるとは、明治時代だからなのか、彼が懐が深いからなのか
河上清は現地のアメリカ人と結婚し、現地の新聞に日米関係や日本の施政についての解説文を寄稿し、有名なジャーナリストとなる。
その姿勢は常に日本よりであった。
彼の子どもが三人いて、長男は日本の著名な女優竹久千恵子と結婚する。
そのうち、真珠湾攻撃が始まると、アメリカ政府は河上清を尋問する。
常に日本よりだった姿勢が元々FBIなどから監視対象になっていたためだ。
河上清はこの尋問で、日本の戦争する目的は正しいが、この戦争は負けるべきだと主張する。
貧しい日本にはアジア諸国を救うことはできないという考えだった。
今まで日本よりだった主張がアメリカから見て転向したとみられることになり、
戦後河上清はアメリカでは使ってもらえなくなる。
それでも日本側はアメリカとのパイプとして戦後も頼りにするわけだが、果たして役に立ったのかは不明だ。
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