著者である安藤昇の半生を描いているのかな、と思ったのだが、違った。
残念
別の本を借りようと思う。
安藤昇は、特攻隊に志願し、戦争を生き延び、
戦後安藤組を立ち上げ、事件を起こして刑務所に入り、
出所した後芸能界に入った人です。
ある理由から彼の特攻隊志願から安藤組を立ち上げるまでを詳しく知りたかったのですが、
それはこの本ではわからずじまいでした。
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俺がズボラだから言うわけじゃないけど、部下を束ねる立場になったら、
正義感とやらは、あまり振り回さないほうがいい。
経費のちょっとしたごまかし、ちょっとした報告の嘘、ちょっとした不正
なんていうのは、見て見ぬふりをするのが度量というもんだ。
このことを「水清ければ魚棲まず」という。
水が澄んできれいすぎると、魚は姿を隠すことができないからね。
近寄ってこないという意味と、もう一つ、
あまりに清冽な水は、餌になるプランクトンが乏しいから魚が集まらない
という意味の二つがある。
このことは歴史が証明している。
清廉潔白であることは人間として素晴らしいこと。
だけどそれは「自分の生き方」として心すべきものであって、
他人に強いたり、部下に求め過ぎたりすれば反感を買うということ。
対人関係は、ほどよく濁ってみせてちょうどいいんだね。
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山岡哲舟は西郷隆盛に談判するため、勝海舟の書状をたずさえて
東海道を駿府にくだった。
書状は、慶喜が上野・寛永寺に謹慎していることなど、幕府の状況を認めたもので、
要するに”和睦”へ向けたメッセージだね。
ーー中略ーー
そして、鉄舟と対座した西郷隆盛は、鉄舟の人物を見てとるや、
「徳川に恭順の心さえあれば、やみくもに進撃はしない」
と伝え、以下5つの条件を示した。
①江戸城明け渡し
②城中の者らの向島移転
③兵器の明け渡し
④軍艦の明け渡し
⑤慶喜の備前預け
これに対して鉄舟は④までは承知したけど、⑤の「慶喜の備前預け」だけは
”君臣の情”として絶対に呑めないと拒んだんだね。
一命をとして談判。
押し切ってしまった。
まさに英雄、英雄を知るで、酒を酌み交わして鉄舟を見送った西郷は、
「命もいらぬ、名もいらぬ男は始末に困るものだが、
始末に困る男でなければ天下の大事ははかれない」
と賛嘆したという。
かくして、江戸無血開城は実現し、明治維新は成る。
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男の生き方を読んだ詩に「雪後の松」というのがある。
事 難 方 見 丈 夫 心
雪 後 始 知 松 柏 操
これは、「事難(かと)うして方(まさ)に見る丈夫の心、雪後に始めて知る松柏の操」と読む。
「男というものは、普段の見かけがどうあれ、いざ大変なことが起こった時に、
その真価がわかるものだ。
松の木は花も咲かず、緑燃える夏場にはこれといってみどころのない木だが、
冬を迎え、雪が降り積ってもそれに耐え、青々とした緑色を保っている」
という意味で、「男は風説に敢然と枝を張る松のごとくあれ」と説くが、
<雪後>を「晩年」に置き換え、「晩年に知る松柏の操」と詠めば、
また違った味わいがあるのではないだろうか。
季節に春夏秋冬がめぐるがごとく、人生に平凡などありはしない。
晴天に霹靂は死ぬまでついてまわる。
「こんなはずじゃなかった」とボヤくことなく、いまから”松柏の覚悟”をもって
生きていくことが何より大事だろうと思うのだ。
晩年に至ってなお、松柏のごとく、青々とした緑を超然と保っていられるか。
男の値打ちは、晩年の処し方で決まるのだ。
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男の終い仕度 安藤昇
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