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公職追放 増田弘

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公職追放―三大政治パージの研究/東京大学出版会
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GHQによる占領期に公職追放が行われたが、
そのうち主に
鳩山一郎:その後首相になる。鳩山由紀夫の祖父
石橋湛山:元ジャーナリストで、その後首相になる
平野力三:社会党議員
のパージ(追放)にスポットを当てている。

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吉田茂と石橋湛山の対立の根底には、やはり、
戦後あるいは占領に処す基本姿勢の相違があった。
敗戦を潔く認め、勝者に準ずる中から活路を見出すことを本意とした吉田の立場、
つまり、吉田流の外交技術の観点やタクティカルなレベルからすれば、
湛山のGHQに対する姿勢は政治家として未熟さの証明であり、
その気概と甲骨さは逆効果と映ったであろう。
他方、明確な戦後構想を抱いていた湛山の立場からすれば、
吉田の無思想性は気がかりであった。
加えて吉田特有の官僚的権威主義と秘密主義に嫌悪感を覚えた。

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平野力三の追放問題に関して日本側に裁判権があるかどうかが世間の注目を集めたが、
2月2日、東京地方裁判所民事14部の新村義広(裁判長)は、
「申請人(平野)を公職追放の覚書該当者とする旨の指定の効力は、
申請人から被申請人(片山)に対する右指定の無効確認等の本案判決確定に至るまで、
その発生を停止する」
との決定をくだした。
平野及び平野派がこの判決に歓喜したことはいうまでもない。
しかし政府は、4日に臨時閣議を開き、
「仮処分は憲法にもとり、司法権の行政権簒奪である」と決定し、
これを直ちに政府声明として発表した。
ところが三淵忠彦最高裁長官は、
「新村裁判長の仮処分は合憲であり、司法権の行政権侵害とはならない」
旨の新聞発表を行った。
とうとう社会党の内紛が行政当局と司法当局との憲法論争に飛び火したのである。
政府からこの通知を受けたGSのホイットニー局長は、五日の午後、
三淵長官を呼び、「追放に関しては日本に裁判権はない」と告げた。
(中略)三淵は次のような談話を発表して、仮処分決定は取り消した。

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それにしてもGSが要求する地方パージの範囲は膨大であった。
とくに県知事、市長といった地方行政のトップから、
町長、村長、町内会長といった末端に至るまでの「長」ばかりか、
大政翼賛会関係で、県から郡町村に至る支部長、支部の顧問、参与および評議員
まで追放しようということは、事実上地方の有力者を網羅して追放することを意味した。


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