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この世の偽善 金美齢 曽野綾子

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この世の偽善 人生の基本を忘れた日本人/PHP研究所
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<北京オリンピック用の砲丸はつくらない>
1996年のアトランタから2004年のアテネまで、日本が三大会連続で
金銀銅メダルを独占した五輪種目があります。
陸上の男子砲丸投げで、選手ではなく、メダルを獲得した選手の砲丸が、
ことごとく日本の小さな町工場でつくられていた。

「魔法の砲丸」と呼ばれるその砲丸は、埼玉県富士見市にある有限会社辻谷工業
という従業員六名の町工場で、昭和8年生まれの職人にして経営者でもある
辻谷政久さんが旋盤を削って手作りしてきました。
北京でもメダル独占となるはずでしたが、そうはならなかった。
2004年8月に中国・重慶で開催されたサッカーのアジアカップで、
中国人サポーターが見せた日本に対するアンフェアな態度、むき出しの憎悪を見て、
悩んだ末に辻谷さんは「北京五輪用の砲丸はつくらない」と決断したんだそうです。
「砲丸は私の分身です。
とても中国には出せない。
大事に使ってくれる選手には申し訳ないが、職人としての意地があります」

<生活保護>
曽野綾子
実に今の日本は、弱者が強くなった時代とも言えます。
もちろん、ホームレスやインターネットカフェなどに寝泊まりしている人たちの中には、
ほんとうに体が弱かったり、不思議なほど運の悪かったりする人もいるのでしょう。
しかし世間には、こういう声もあるんです。
「農村に行くとか、飯場にいきゃいいのになあ。
どこの農村だって人手が足りなくて困っている家族がいる。
ただで働きます、って言えば、飯くらい食べさせてくれて、納屋の隅っこで寝かせてくれると思うよ。
食べさせてくれるだけでいいんです、って言ったって、誠実に働けば、
そのうち小遣いくらいくれるようになると思うよ。
飯場だって、今時は仕事がきついからって日本人が寄り付かない代わりに
外国人労働者が多くなってるんだから、かえって働かせて下さいって行けば歓迎されると思うけれどなあ。
そういう解決の方法はまったく考えないんだね。
少しでもつらい仕事は嫌、都会を離れるのも嫌なんだ。
ということは、まだ仕事をより好みしていられる状態だから、本当は困っていないってことじゃないか

こんなことも、いまは恐ろしくて誰も大きな声で言えない。
気の毒だと思われている人の背景を疑ってはいけないし、批判したり、
まだそんな程度では大して気の毒ではない、といったりすることも許されない時代なのでしょう。

<栗林中将の遺書>
昭和20年2月の硫黄島の決戦前に妻に送った”遺書”の内容を教えてくれたことがあります。
そこにはどう書かれてあったか。
吾々ももうとっくに覚悟を決めている。
留守宅としても生きて帰れるなどとはつゆ思わないでその覚悟をしてもらいたい。
ーー中略ーー
墓地についてはこの前豪徳寺などとも申したが、
あれはあの当時東京に定住が出来る場合であったからで今日としてはどこでもよい。
殊にまた遺骨は帰らぬだろうから、墓地についての問題はほんとの後回しでよいです。
もし霊魂があるとしたら御身はじめ子どもたちの身辺に宿るのだから、
居宅に祭ってくれれば十分です。(それに靖国神社もあるのだから)」

<誰の手によって私たちの生活が守られているか>
土木の仕事は、誇りを持って子どもたちに話すことのできる素晴らしい仕事だ
というのが私の実感なのです。
彼らは黙々と今日の日本の経済的基礎を築いてくれました。
マスコミも小説家もできなかったことです。
日本全国をカバーする高速道路、新幹線、上質の電気を十分に得られる発電のシステム、
これらはすべて土木の仕事でした。
でも、私たちはそれを利用しながら、かつて彼らの仕事に感謝したことは
ほとんどなかったと思います。

ことにマスコミは、しばしば彼らを環境破壊者扱いにしました。

「この語から連想するもの。無駄遣い、談合、汚職、利権、環境破壊・・・。
公共事業の不手際が追うべき罪を『土木』が一身に引き受けている感もある」

これは最近の言葉ではありません。
民主党政権の「コンクリートから人へ」というスローガンの時でもない。
平成9年11月7日付の『朝日新聞』の「天声人語」の一節です。
土木に対する深い差別の言葉ですね。


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