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低線量被曝のモラル 一ノ瀬正樹、伊藤乾、影浦峡、児玉龍彦、島薗進、中川恵一

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この本は面白い
著者陣の中で唯一知っているのが「放射線のものさし」などの中川恵一さんだったので、
そっち系だけの本かな、とおもいきや、
中川さんのような考え方を持つ人は6人のうち中川さんだけ
一ノ瀬正樹さんは、話の進行役で、哲学者だからなのか彼の論文は意図が不明でした。

この中で職業として理系・科学者なのは中川さん以外、島薗進さんだけなのですが、
この人は真っ向から中川さんと対立し、どんな微量な放射線でも害があると主張している。

最初は各人が論文を掲載しているが、
後半は対談形式になっている。
様々な人の考えが載っているので、いろいろな考えを知りたい、と言っている人たちはこの本を読むと良いのではないでしょうか。

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癌研究振興財団が2011年に改定した「がんを防ぐための12箇条」というのがあり、
たばこを吸わない、などがある。

数年前の内閣府の調査では、
日本人ががんにならないようにするために何を一番心がけていますか
と問うアンケートをとった結果、そのトップはこの12箇条にはありません。
それは、焦げを食べない、です。
日本人は、そのことに最も気をつけていた。
しかしこれは、これまでの癌研究振興財団の12箇条にはたしかに入っていたのです。
ですから長い間、国は我々を欺いてきたことになる。

12箇条
1.タバコは吸わない
2.他人の煙草の煙をできるだけ避ける
3.お酒をほどほどに
4.バランスのとれた食生活を
5.塩辛い食品は控えめに
6.野菜や果物は豊富に
7.適度に運動
8.適切な体重維持
9.ウイルスや最近の感染予防と治療
10.定期的ながん検診を
11.身体の異常に気がついたら、すぐに受診を
12.正しいがん情報でがんを知ることから

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日本の自然被曝は1.5ミリシーベルト、世界平均では2.4です。
しかし、分布を見ると、西日本の数値が高いのです。
実は、日本の自然被曝は西高東低で、西日本のほうが高いということなのです。
私の研究室にいる、放射線医療を専門とする医者のうち何人もが、原発事故の後、
妻子を吸収や関西に避難させたのですが、
西と言ってもその辺りにいくとかえって被ばく線量が上がることになる。
例えば、岐阜・教徒が一番高い。
そして東京・神奈川は最も低い。
東京・神奈川では関東ローム層によって大地から来る放射線をブロックされているのです。
岐阜には神岡鉱山がありますので、高い。
岐阜と神奈川都の差は年間で0.4ミリシーベルトです。
ということは、一年間の自然被ばく線量に4分の1もの差があるということです。
では、岐阜はがんが多いのか、もちろんそんなことは言えません。
神奈川と岐阜はがん発症率は基本的には変わらないことになります。
イランのラムサールのように、年間の自然被曝が200ミリを超える地域もありますが、
癌が増えたというデータはありません。

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日本の医療被ばく線量2.25ミリシーベルト(原安協、出典1992年)
アメリカのデータとしていま手許にあるのは2006年のものですが、
それによると自然被曝が3.1ミリシーベルトと結構多いことがわかります。
医療被曝も3.1です。
合算すると6.2です。
アメリカではこれに1ミリシーベルトを加えた7.2が被ばく線量の限度とされています。
それでは、アメリカでの医療被曝において、なかでも突出して多い治療のケースは何か。
CTスキャンです。
これが医療被曝の約半分を占めます。
さきほどもふれましたように、CTは1回に6から7ミリシーベルトくらいです。
これを3回やると、福島の計画的避難区域の指標とされている数値を超えてしまいます。
ーー中略ーー
このことはほとんど知られていないのですが、タバコを吸うと被曝します。
たばこを吸えば、がんがフエますが、それは被曝によって直ちに人体に影響の出る2000ミリシーベルト相当ということではありません。
要するにポロニウムなど、たばこの煙の中には実際に放射性物質が含まれているのです。
その量は毎日1,2箱を吸うと年間0.2~0.5ミリシーベルトになります。


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私が専門としているのは、放射線治療です。
その中の一つの事例ですが、一回の被ばく線量は例えば乳がんで乳房を切り落とさず、
部分的に繰り抜いて放射線をかけて乳房を温存する、乳房温存療法の患者さんの場合ですと、
一回2シーベルトになります。

2000ミリシーベルトですね。
これを25回やっています。
ですから、総量は5万ミリシーベルトということになります。
ちなみに、2シーベルトで温度は何度上がるかといえば、2000分の1度です。
被曝した人間が半分の確率で死亡する放射線被曝は、全身に4シーベルトです。
2シーベルトで2000分の1ということは、4シーベルトで1000分の1度、
温度が上がることになります。
つまり、広島・長崎の原爆災害におけるケロイドやけどは、放射線とは全く関係がないのです。
爆心地の温度は3000-6000度ですから、当然熱風でやけどをする。
しかし、多くの日本人がやけどは放射線で起こっていると誤解しています。

前立腺がんの治療などは、80シーベルトです。

被曝することは、もちろんいいことではない。
しかし、それによって得られることもある。
また、その逆もありますが。

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飯舘村は山菜の宝庫です。
ゼンマイやタラの芽、これらの放射線量は非常に高い。

山菜は高い、だからこれらは食べてはいけません。
にもかかわらず、飯舘村では裏山で山菜が獲れますから、
村民はこれまでそうしてきたように、どんどん行って獲ってきて食べてしまいます。
それぞれに収穫して自分たちで消費するものは、当然流通機構に乗りませんから
計測されることはありません。
これは非常に危険だとお伝えし、後日現地に行って勉強会をやろうということで、
6月にお話をしました。

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ゆっくりした、非常に少ない被ばく線量ですと回復が起こる、修復が起こるからです。
また、少量の被曝はがんを減らすと主張する人もいます。
アキタの玉川温泉(ラドン温泉)で治ると思う人は、この立場でしょう。
それに対して、低い線量は非常に危険だという考え方もある。
ECRP(欧州放射線リスク委員会)のクリス・バズビー氏などは、この考えです。
私は、これを理解することができませんし、国際的にも受け入れられていない。
(バズビー氏は、内部被曝のためのサプリメントを販売していると報じられています)

ーー中略ーー
低線量被曝の人体影響は、科学ではなく、リスク管理上の「哲学」であります。
要は、人体に影響が出ると実証できる範囲が科学なのですが、
しかしそれが不可能な範囲について規範を持ちだそうとするのは哲学です。

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日本は、世界一の「がん大国」でありながら、がん対策後進国である。
とりわけ、がんの早期発見の鍵であるがん検診受診率が低迷している。
一方、日本が目標とする「がん検診受診率50%」を達成しているのがおとなりの韓国で、
国を挙げたがん対策が進んでいる。
その反面、”過剰ながん検診”の結果として、甲状腺がんの発見が急増するなどの”副作用”が出ていることも確かである。
今、韓国女性に一番多いがんは、甲状腺がんである。
韓国女性に甲状腺がんが増えて、女性のがんのトップになったのは、
がん検診ブームで甲状腺の検査が急増し、元々あったがんが発見されるようになっただけである。

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例えば、塩分過多の食生活と運動不足もがんを増やすわけです。
野菜不足、塩分摂りすぎ、肥満も、放射線被曝で言えば、一年あたり100から200ミリシーベルト位の被曝に相当するということなのです。
お酒を、毎日2合飲めば、年間1000ミリシーベルトの被ばく線量、
私のように毎日3合飲めば、これはもう年2000ミリシーベルトの被ばく線量と同じリスクになります。

煙草はそれ以上です。

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