直木賞作家である佐藤愛子さんが、自らの一族の歴史を著したもの
私は作者をこの本で初めて知ったが、
彼女の兄は、日本人なら誰でもその作品を知っている。
「ちいさい秋みつけた」
そう、あの童謡を作ったのが著者佐藤愛子さんの異母兄である佐藤八郎
さらに、この佐藤八郎と佐藤愛子の父親は、佐藤紅緑といって、
戦前の有名な少年向け小説、「ああ玉杯に花うけて」の作者です。
この家族がみんなが皆波瀾万丈で、
正直、人生が壊れているとしか思えなかった。
一番幻滅したのは、あの「ちいさい秋みつけた」がヒロポン(かつての有名な覚せい剤)中毒だったときに作られたものだったことを知ったときだった。
この佐藤八郎さんはWikipediaを見ればわかるが、それ以外にも
うれしいひなまつり
りんごの歌
などがある。
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漫画少年の編集長だった加藤賢一さんが佐藤紅緑さんに作品を書いてもらうために言ったくどき文句
当時、佐藤紅緑は
「君はハナタレ小僧の読むものをオレに書けというのか!」
と少年小説に書くきは全くなかった。
「恋愛小説を書く作家は掃いて捨てるほどいます。
しかし日本の将来を担うハナタレ小僧のために筆をとる小説家はいません。
ハナタレ小僧に正義と勇気を与える作者は、紅緑先生をおいて他にはいません・・・」
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ああ玉杯に花うけて
が戦前の少年向け小説であることから佐藤紅緑は軍国主義だと考える人がいるが、
彼の次男の節(たかし)の言葉からそれが間違っていることがわかる。
名もない男
「しかし紅緑先生の小説も、社会の矛盾、貧富の差の不条理を必ず突かれていますね。
先生は資本家と軍人と巡査がひどくお嫌いですね。
それでわたしも嫌いになりました。」
節
「オヤジは権力が大嫌いでね。
資本主義の仕組みというものを大いに批判しているんですが、
しかしこの万世一系の天皇のしろしめす国、世界に比類の無い日本の国体を
唯一無二のものとしてあがめていますんでね。
それさえなければとっくに社会主義者になっているところですよね」