Quantcast
Channel: 読書は心の栄養
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1745

新・帝国主義の時代 左巻 佐藤優

$
0
0

新・帝国主義の時代 - 左巻 情勢分析篇/中央公論新社
¥1,995
Amazon.co.jp
レーニンによる帝国主義の5つの定義
1.資本の集積と集中によって、寡占(独占)が出現すること
2.産業資本と金融資本は、金融資本の優位をもたらすこと
3.商品輸出と区別された、資本輸出が重要になる
4.多国籍企業が形成され、国境の制約から生じる資本間の軋轢を回避する
5.主要国による勢力圏の分割が完了している

これによれば、現在も帝国主義の時代ということになる。
ただ、植民地政策を行うことはコストがかかるために現在ではこうした政策はとられず、
資本投資を行なって自国の勢力を拡大していく、という新帝国主義の時代に入っている
というのが著者の主張です。

<中東>
インテリジェンス機関元幹部との対話
元幹部「仮にイスラエルがイランを攻撃することになると、
アルカイダのようなスンニー派のテロ組織もイランを支持する。
そして、中東諸国のみならずヨーロッパにおいてもテロ活動が積極的に展開されることになる」

佐藤「どうしてヨーロッパなんだ」

元幹部「軍事力では、イランもアルカイダもイスラエルに対して勝利することはできない。
そこで、『イスラエルとの通商を断絶せよ』と要求する無差別テロをヨーロッパで行う
ヨーロッパ社会はテロに弱い。
人口770万人のイスラエルは、ヨーロッパにとって死活的に重要な市場ではない。
そうなるとテロにヨーロッパが屈し、イスラエルが事実上の経済封鎖を受ける可能性がある
その場合、イスラエルは疲弊し、国家存亡の危機に直面することになる。
これらの要因以外に深刻なのは、イランが核兵器を保有すると、
サウディアラビアとパキスタンで結ばれた例の秘密協定が・・・」

佐藤「それは面倒なことになる」

「例の秘密協定」とは、イランの核保有が確認された場合、
可及的速やかにパキスタンの保有する核弾頭の幾つかを
サウディ・アラビアに移転するという条項

を含むサウディとパキスタンの秘密協定のことだ。
もちろん、サウディもパキスタンもこのような秘密協定の存在を認めていない。
しかし、中東を担当するインテリジェンス専門家は、
この秘密協定の存在を前提に情勢分析を行なっている。
そもそもパキスタンの核開発は、サウディの資金援助によって進められた経緯がある。

元幹部「オーナーであるサウディが『核弾頭をよこせ』と要求した場合、
パキスタンはそれを拒否することができない。
また、現在の米・パキスタン関係、米・サウディ関係を考慮した場合、
米国がパキスタンからサウディへの核弾頭の移転を阻止することはできない。」

佐藤「核不拡散体制にヒビが入る」

元幹部「ヒビが入るというレベルの話ではない。
現行のNPT(核不拡散条約)体制が機能しなくなる。
なぜなら、サウディが核弾頭を購入すれば、アラブ首長国連邦、カタール、オマーンなど
も核弾頭をパキスタンから購入することになるからだ。
シリアも闇市場で核兵器の入手に努めるだろう。
中東でこのような状況が生じれば、世界的規模で核保有国が増える。
その結果、これまでと全く異なる力の再編が起きる。
また、地域紛争で核兵器が使われる可能性が飛躍的に高まる」

佐藤「・・・」

元幹部「それだから、西側インテリジェンス機関による合同工作が行われているのだ。
この工作の目的は、核兵器と弾道ミサイルを研究開発、製造する施設の破壊や暗殺だ。
こういう仕事に長けているのは英国とイスラエルだ。
もちろん両国ともこのような秘密工作に従事していることは絶対に認めない。
しかし、この両国には、国家と国民を守るために行われるインテリジェンス活動
を許容する文化があり、また国民もマスメディアもそれを支持する。
それだから、これからスパイ小説の世界のような暗殺や破壊活動が行われるようになる。」


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1745

Trending Articles