この本は、国鉄が民営化されるまでの経緯を記している本
著者は旧国鉄社員で、JR東海の社長だった方(現名誉会長)
実際に民営化に携わっていたようです。
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鉄道のインフラ整備増強のためには政府からの出資が必要であるとし、政府出資を強く求める要請を度々行ってきた。
しかしながらそれはついに実行されることなく、代わりに財政投融資資金という形で、国が長期的に安定した金利の資金を貸してくれることになった。
その後の国鉄の借金経営の大きな原因は、この制度そのものに初めから内包されていたといえる。
2つ目の欠陥は、経営の一番重要な事項、すなわち運賃の決定権、ならびに設備投資も含めた年度の事業計画決定が国鉄自身ではなく国会の議決により決定されていたことである。
運賃の決定は、運賃法という法律の改正を行うことによってはじめて可能になる。
つまり、国会の意思決定に委ねられていた。
設備投資もまた、政府の予算の一部として国会の議決を経なければならなかった。
ーー中略ーー
国鉄は昭和20年代、30年代、40年代を通じ、一貫し繰り返して運賃の適時適切な値上げを要求し続けてきたが、必要とする時期に必要な率の値上げが認められることはなかった。
運賃値上げがほぼ自由に認められるようになったのは、昭和51年11月の50%値上げと、
それに続き昭和52年12月に運賃法定制度を緩和する法律が成立し、
コストアップをカバーするため一定の幅で弾力的値上げができるようになってからだった。
この時にはもう、航空機、海運、トラック、自家用車、バスなど、あらゆる分野で代替輸送機関が整備され競争環境が厳しくなっており、現実には運賃値上げは利用者を大幅に失う結果となった。
全国一律の運賃体系を維持し、内部補助により全国鉄道網を維持運営するという制度は、
独占を前提としなければ成り立たない。
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一部に、東海道新幹線は国費で建設されたという思い込みがある。
また、東海道新幹線が開業したその年から国鉄が赤字になったものだから、
「東海道新幹線の建設が国鉄の赤字の引き金を引いた」という誤解もある。
この2つはいずれも間違いである。
東海道新幹線はすべて借金と、内部留保された自己資金で建設された。
それを運賃・料金収入のみで回収したというのが事実である。
東海道新幹線は当初の計算では4000億円程度必要とされたのを、
十河総裁がそれでは国会の承認を得られないというので1900億円に削って要求したと言われている。
とすれば、3800億円あまりに増額したのは予定の行動だったわけである。
世界銀行から8000万ドル(借り入れ当時で約288億円)の借款をしたのも、
途中で引き返すことが出来ぬよう政府の退路を遮断するためであり、
この知恵を授けたのは国鉄の先輩で時の大蔵大臣であった佐藤栄作氏であるとも聞いたが、本人に確認する機会を得なかった。
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著者は旧国鉄社員で、JR東海の社長だった方(現名誉会長)
実際に民営化に携わっていたようです。
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鉄道のインフラ整備増強のためには政府からの出資が必要であるとし、政府出資を強く求める要請を度々行ってきた。
しかしながらそれはついに実行されることなく、代わりに財政投融資資金という形で、国が長期的に安定した金利の資金を貸してくれることになった。
その後の国鉄の借金経営の大きな原因は、この制度そのものに初めから内包されていたといえる。
2つ目の欠陥は、経営の一番重要な事項、すなわち運賃の決定権、ならびに設備投資も含めた年度の事業計画決定が国鉄自身ではなく国会の議決により決定されていたことである。
運賃の決定は、運賃法という法律の改正を行うことによってはじめて可能になる。
つまり、国会の意思決定に委ねられていた。
設備投資もまた、政府の予算の一部として国会の議決を経なければならなかった。
ーー中略ーー
国鉄は昭和20年代、30年代、40年代を通じ、一貫し繰り返して運賃の適時適切な値上げを要求し続けてきたが、必要とする時期に必要な率の値上げが認められることはなかった。
運賃値上げがほぼ自由に認められるようになったのは、昭和51年11月の50%値上げと、
それに続き昭和52年12月に運賃法定制度を緩和する法律が成立し、
コストアップをカバーするため一定の幅で弾力的値上げができるようになってからだった。
この時にはもう、航空機、海運、トラック、自家用車、バスなど、あらゆる分野で代替輸送機関が整備され競争環境が厳しくなっており、現実には運賃値上げは利用者を大幅に失う結果となった。
全国一律の運賃体系を維持し、内部補助により全国鉄道網を維持運営するという制度は、
独占を前提としなければ成り立たない。
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一部に、東海道新幹線は国費で建設されたという思い込みがある。
また、東海道新幹線が開業したその年から国鉄が赤字になったものだから、
「東海道新幹線の建設が国鉄の赤字の引き金を引いた」という誤解もある。
この2つはいずれも間違いである。
東海道新幹線はすべて借金と、内部留保された自己資金で建設された。
それを運賃・料金収入のみで回収したというのが事実である。
東海道新幹線は当初の計算では4000億円程度必要とされたのを、
十河総裁がそれでは国会の承認を得られないというので1900億円に削って要求したと言われている。
とすれば、3800億円あまりに増額したのは予定の行動だったわけである。
世界銀行から8000万ドル(借り入れ当時で約288億円)の借款をしたのも、
途中で引き返すことが出来ぬよう政府の退路を遮断するためであり、
この知恵を授けたのは国鉄の先輩で時の大蔵大臣であった佐藤栄作氏であるとも聞いたが、本人に確認する機会を得なかった。
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