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コンピュータが仕事を奪う 新井紀子

この本、久々にかなりのヒットでした。
特に若い人はよく読んでおいたほうがいい。

コンピュータが得意なもの、不得意なもの
将来、どういうところで人は働くことができるのか
そうしたことを考えさせられる

著者は数学者です

Jabberwackyというチャットロボットサイトがあります。
英語でも日本語でもとりあえずチャットすると、会話を返してくれます。
ちょっと気色悪いです

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仮に、暗黙知(の一部)が言語化できたとして、多様かつ膨大なデータベースができあがったとしましょう。
では、その情報を「必要としている人」に「適切に」届けられるかどうか。
データを検索するのならば、簡単です。
ですが、多くの場合、こういうノウハウが欠如しているために困っている人は、
「なぜ自分が困っているか(営業成績が上がらないか等)」を言語化できないのです。
だからこそ、困っているのです。

ーー中略ーー

つまり、このように「人間でも、どう解決したらいいかよくわからないこと」をコンピュータで解決しようとすると、莫大な費用がかかる上に、ろくな成果が得られない、という羽目に陥るのです。

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レストランチェーン店ロイヤルホストは、ツイッター上に公式アカウントRoyal_Hostを有しています。
ツイッター上の誰かが「ロイホなう」とつぶやくと、すかさず「いらっしゃいませ」あるいは「ご利用ありがとうございます」とメッセージを送ってよこすのです。
返事をされた人は面食らって、このアカウントは人間なのかロボットなのか、悩みます。
すると、このアカウントは「ボットではありません。人間です」と返事をするのです。

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20世紀最後の20年、コンピュータに取って代わられたのは「手続きとして完全に記述できてしまう作業」でした。
駅の切符販売、銀行の窓口業務、電話オペレーターなどの仕事が、それです。

一方、21世紀に入って、最初にコンピュータに取って代わられたのが、
「抽出可能な特徴から、いくつかのタイプにデータを分類する」という仕事です。
たとえば、葉書に書き込まれた郵便番号。

同じ「7」という数字でも、書く人が違うと随分差がありますね。
年末年始の繁忙期、郵便局に集められた膨大な料の年賀はがきを郵便番号ごとに正しく分類するのは、かつては、非常によく訓練された、しかも勘の良い郵便局員の仕事でした。
目にも留まらぬ速さで葉書を正確に分類するその様子は、神業と称えられていたと聞きます。

しかし、現在、この仕事はコンピュータによって完全に取って代わられました。
文字認識機(OCR)の精度が向上したからです。

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Alipr.comはユーザーが写真をアップして、共有したり鑑賞したりするためのウェブサイトです。
まず、ユーザーは自分の持っている画像をAlipr.comのウェブサイト上にアップロードします。
すると、Alipr.comは、その画像のタグの候補を表示してくれます。
私たちはそれを見て「あれ、タグが間違っている」と思い、訂正します。
そうすると、Alipr.comはアップロードした画像に正しいタグを付けて保存し、
同じタグを持つ写真のリストを見せてくれるのです。
ーー中略ーー
そうなのです。
Alipr.comはユーザーにサービスを提供しているように見えて、
実はユーザーに、無報酬で画像のタグ付けをさせるためのシステムなのです。
また、それぞれの写真に評価を付けさせることにより、人間が持つ価値判断までも機会に学習させようとしていることがわかります。

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科学技術の動向がどのように変化をしており、次にどこにイノベーションが起こりうるかを知ることは、
消費者の動向分析と同じくらい10年、20年先の経済動向を占う上では重要なデータです。
このような科学技術分析には、
世界中で発表されている論文データの他、それらの引用度数の変化と範囲、
論文で用いられた実験データの種別、研究者グループの分布と活性度、
各国における競争的資金の投下の動向など
深層の動きをキャッチすることが不可欠です。
残念ながら、このようなデータは、著者である科学者ではなく、
論文の発行元であるElsevier(エルゼビア)や、Nature Publishing Group(ネイチャー出版グループ)など欧米の私企業が独占している状況です。

そして、もちろん、グーグルやアマゾンといった会社は、
現在集中的に個人の活動記録(ライフログ)を収集しようとしています。
それは、検索履歴、商品購入履歴、メールの内容、カレンダーの予定、
リンクのクリックの傾向、アンドロイド携帯からアクセスした場合には位置情報までが収集されます。
それらを横断してデータ科学的手法で分析することによって、あなたがどれだけウェブで散財してくれるか、予想を立てることが出来るでしょう。

もちろん、あなたは
「自分は彼らが提示した広告など、めったにクリックしない」
と胸を張るかもしれません。
でも、そんなことは、彼らにとっては織り込み済みのはずです。
あなたは、あなたの履歴から彼らが予測した確率とそう違わないような確率で、きっとその広告をクリックするに違いないからです。

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では、いったい人間はどの能力において戦えばよいか、というと、
コンピュータが苦手で、しかもその能力によって労働の価値に歳が生まれるようなタイプの能力で戦わざるをえない
のです。

コンピュータは知識を蓄積したり、手順通りの作業をしたり、
大量データから傾向をつかみとることが得意です。
つまり、暗記と計算とパターン認識を最も得意とするのです。
一方で、脳の働きのうち、論理と言語を駆使して高度に思考し表現する仕事は苦手です。
また、人間の多くにとって容易な、見る・聞く・感じるなどの五感を使った情報処理も比較的苦手です。
ーー中略ーー
身体性を必要とせず、また直接に生産活動に携わらない
ホワイトカラーの仕事は、コンピュータの本格的な登場によって、上下に分断されていく
ことでしょう。
つまり、人間であれば多くの人ができるがコンピュータにとっては難しい仕事と、
コンピュータではどうしても実現できず、人間の中でも一握りの人々しか行えない文脈理解・状況判断・モデルの構築・コミュニケーション能力等を駆使することで達成できる仕事
の2種類に、です。



コンピュータが仕事を奪う/日本経済新聞出版社
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