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沖縄の不都合な真実 大久保潤 篠原章

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この本は、とても面白い

おそらく、保守からも革新からも知らないことがいっぱい書かれているものと思われる。
日本人の不得手な安全保障・軍事については最小限とし、
むしろ経済的な数値・統計に重きを置いているように感じました。
非常におすすめです。

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名護市の要望を受けてできあがったのが滑走路を日本にして埋め立てて面積を増やす「V字案」です。
回転翼機主体の基地の離着陸を二本に分けたところで騒音軽減には貢献しません。
なぜこれが騒音軽減につながるのか訳が分かりませんが、それでもこのV字案が2006年に閣議決定され、現在も生きている日米合意案です。

しかしまだ話は終わりません。
次に名護市はこのV字を沖合にずらせと要求し始めたのです。
これは水深が深い大浦湾の工事が減り、浅瀬の埋め立てが増える案でもあります。
大浦湾は桟橋方式という高度な海洋土木技術が必要なので、本土の業者しか受注できません。
建設場所が10メートルずれるだけで地元企業の受注額は億単位で変わります。
移設場所と建設工法は沖縄側にとって決定的に重要なのです。

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福岡から選挙取材の応援で沖縄に来てくれた同僚が、
「沖縄って、本音と建て前があるんじゃなくて、『本音と建て前をみんなで演じている』感じですね」
としみじみ言ったことがありました。
うまい表現だなと感心しました。
「振興策がほしい」という本音のために「基地反対」という建前を主張する、というのが
「沖縄の本音と建て前」の解説です。
しかし、現実には「振興策はいいこと」という行政とマスコミの論調を疑うことなく思考停止し、
「振興策をもらい続けるためには基地反対と言い続けなくちゃ」
という姿勢を、保守も革新も全員がそれぞれの立場で演じている感じです。

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政府が沖縄の基地削減に本気になれない理由の一つがここにあります。
基地を減らせば、多くの県民や自治体から恨まれることになるのです。

沖縄では基地が返還されるとき、必ず返還反対運動が起きます。
2006年に「象のオリ」と呼ばれた楚辺通信所や瀬名波通信施設、読谷補助飛行場などが相次いで返還された読谷村でも、返還の際には「基地を使い続けてください」という看板が掲げられました。
同じ年、嘉手納弾薬庫の返還予定地に陸上自衛隊の小銃射撃場を建設する案に反対する東門美津子沖縄市長に対し、地主は
「返還後の跡地利用は困難。自衛隊の使用を認めるべきだ。
借地料が入らなくなれば死活問題になる」
と、継続使用を求めました。

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10月下旬のハロウィンには数千人規模の周辺住民が米兵からお菓子をもらうため仮装して基地に集まり、ゲートに続く道路は大渋滞になります。
用意したお菓子がなくなり、閉め出された魔女姿の女子高生やかぼちゃのお面をつけた子供の手を引くお母さんら数百人があきらめきれずに道路に座り込む光景を見たとき、
私は強いショックを受けました。
今も続くこの「ギブ・ミー・チョコレート」状態は決して報道されません。

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なぜ日本一危険な米軍基地が、実は普天間ではなく神奈川県の厚木だと言われているのかがわかるはずです。
都心も例外ではありません。
六本木ヒルズからわずか300メートルほどの場所に米軍基地があることを知る沖縄の記者は少ないでしょう。
通称「麻布米軍ヘリ基地」(赤坂プレスセンター)と呼ばれるこの基地では一日三回程度、
定期便のヘリが離着陸し、深夜や早朝にも住宅密集地の真上を飛びます。
東京都や港区は米国に返還を求めていますが、未だに実現していません。

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全国最低の一人あたり県民所得、全国最高の失業率といった問題はよく知られています。
が、沖縄を苦しめる問題はそれだけではありません。
離婚率全国一、父子家庭比率・母子家庭比率全国一、
待機児童数比率全国一、DV発生比率全国一
などといった家庭・子育て環境に関わる指標や、
全国最低の高校進学率・大学進学率、教員を増やしてもいっこうに改善しない全国最低の学力水準(小学校・中学校)、
全国一の給食費滞納率といった教育関連の指標を見るだけでため息が出ます。

ネガティブな指標はこれだけにとどまりません。
最低賃金(664円・2013年)、一人あたり納税額、国民年金納付率、
NHK受信料納付率、自動車保険(任意)加入率などは全国最下位、
反対に、
非正規雇用率、国税滞納発生割合、男性肥満率などは全国最高です。

一方で、人口あたりのファーストフード店舗数(ハンバーガー、フライドチキンなど)、
人口あたりの飲み屋店舗数、人口あたりのレンタルビデオ店舗数、
人口あたりのゲームセンター店舗数などは全国一です。

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沖縄県の場合、雇用者一般の平均月額報酬は24万8800円。
これに対して沖縄県の地方公務員の平均月額報酬は41万1300円。
公務員の報酬を雇用者一般の報酬で除してみると1.65という数値が算出されます。
これは、公務員は一般雇用者の1.65倍の月額報酬を得ていることを意味します。
全国平均は1.22で、沖縄県は全国で最も高い数値を示しています。
(最低は神奈川県の1.12)

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本土では地租改正(1873年)と秩禄処分が行われ、
士族の特権は完全に失われましたが、沖縄では琉球処分後も士族の経済的特権(秩禄・俸給)は温存・継続されたのです。
(旧弊温存策)

王政は廃されたものの、不平士族を懐柔するために彼らの封建的な経済基盤はそのまま放置され、一般大衆は琉球処分後も重税に苦しみました。
ーー中略ーー
王族・士族の収入の源泉となっていた税制や土地制度が最終的に改められたのは
1903年のことです。

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沖縄県にとって最大の経済的な課題は何よりも「貧困」にあります。
が、この問題をさらに掘り下げてみると、
①所得(雇用者報酬または労働分配)が公務員に偏在している、
②所得上の著しい公民格差が存在する、
③政治的な影響量のある公務員が経済的イニシアティブも握っている、
④結果として「民」優位ではなく、琉球王朝以来の「公」優位の経済社会が温存されている、
といった問題点が浮き彫りになります。
失業率や沖縄を悩ます他の経済的・社会的課題の大部分も「公」優位の、
言い換えれば「公が支配する社会経済体制」に起因すると考えてよいでしょう。

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琉球史研究の第一人者で副知事でもあった高良倉吉氏が、こんなことを言ったことがありました。
「いつのまにか、沖縄人は大江健三郎と筑紫哲也が言う被害者沖縄のイメージ通りに振る舞うクセが付いてしまった」
その後、「沖縄が自立できないのは筑紫哲也のせいだ」という言葉を、
戦後60年の取材をしている中で地元の複数の人から聞きました。

ーー中略ーー
この沖縄観が県内でも定着し、戦争も基地も被害者の視点だけで語り、
自立に向けた議論を阻む。
「日本はなんとかしろ」という依存体質、陳情文化が一般人にも蔓延したと、
高良氏は解説してくれました。

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1990年代に入ると日本の反戦平和運動は虫の息でした。
旧総評・旧社会党系(1996年1月に「社会民主党」と改称)の活動家たちが、
「運動の火を消すな」といわんばかりに生き残りをかけて臨んだのがこの県民投票でした。
投票率は期待通りではありませんでしたが、この県民投票を反戦平和運動のシンボルに仕立て上げることによって、運動そのものの活路を見いだすことには成功したのです。
平和センターを中軸とした沖縄における反戦平和運動の「実力」と「存在感」は全国に強く印象づけられ、虫の息だった日本の反戦平和運動は息を吹き返しました。

さらに社会民主党(旧社会党)が全国的に大幅に退潮する中で、
沖縄が現在も同党の最大の拠点となっている背景にも、この県民投票の果たした役割が透けて見えます。
忌憚なく言えば、平和センター・連合沖縄に寄りかかる形で、社会民主党は「反米・反戦・護憲政党」としての命脈を保ってきました。その出発点がまさにこの県民投票だったのです。

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