この本は、戦時中にシナでアヘンを裁いていた里見甫(はじめ)の生涯を描いた作品
とても面白かった。
最初は「阿片王」ということもあり、おっかなびっくり読んだのだが、とてもためになる本だ。
私は支那事変にせよ、大東亜戦争にせよ、
*帝国主義としての侵略
*アジアの解放・五族協和
の片側のみを強調した考えには同調できない。
様々な本を見るに、この要素はいずれも存在すると考えている。
日本は昔から千差万別な考えが存在し、その時々に様々な考えが混在した中で行動に出ているように見える。
様々な考えの人に対して様々な動機を与え、一つの方向へ導いていくというのは、リーダーの役割だ。
だから、先の大戦で様々な動機の人がいたことは想像に難くない。
この本にしても、里見甫などの日本軍のアヘン売買を
*売買を国家で管理して結果としてアヘン被害者を減らした
*国がかりでアヘン漬けにした
という二つの見方のいずれかに偏るのはいけない。
様々な関係者は様々な思惑で活動したのは間違いないだろう。
いずれにしてもどの関係者も国を想い行動したのは間違いない。
この本などを読んで感じるのは、
日本軍が戦時中に蒋介石や毛沢東とも裏で示し合わせていた部分も存在していることだ
戦争というのはそれくらい何でもありなのだろう。
この本では日本軍が蒋介石が上海から撤退する際に国民政府側から、
お金とアヘンの融通 (10万元+アヘン6トン)
を条件に提示され、それを呑んでいることが書かれている。
この本で出ている影佐禎昭大佐は、「毛沢東(遠藤誉)」や「抗日戦争中、中国共産党は何をしていたか 謝幼田」の中で、毛沢東の子分、潘漢年から情報提供を受けていたようだし、
何が抗日なのかわけがわからない
さらにはアメリカのCIAの前身たるOSSが延安の共産党、そして日本共産党の野坂参三とつるんでいた(情報の融通)
ことも書かれている。
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大蔵官僚だった古海忠之が里見に資金提供を依頼するときのこと
「世間では、大政翼賛会というとあたかも一枚岩のように見ているようですが、
内情はひどいものです。
とりわけ内務省と軍の主導権争いは熾烈をきわめ、いまだにいがみ合っています。
東条首相は軍出身ではありますが、この状態に辟易して、双方の息がかかっていない議員を当選させ、
自らの立場の強化を図ろうとしています。
満州時代からの盟友である岸さんなどは、さしずめその尖兵的な存在なわけですが、
悲しいかな先立つものがない。
いっぽうの内務省系候補は、財閥が背後に控えてますから、選挙資金は潤沢です」
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「盛文頤からの言づてです。
鹿地は重慶当時関わりのあったOSS、現在は再編されてCIAになっておりますが、それとある取り決めをしておりました。
支那にいるあいだは、親交のあった金元鳳ら朝鮮労働党系の者たちと連絡を絶やさず、
その動向をOSSすなわち現在のCIAに報告する、
日本に帰国した後は、共産党関係の情報を提供する、という内容の取り決めです。
しかるに鹿地は、日本帰還後、革新陣営の盛り上がりぶりを目にし、ソ連寄りの姿勢を強めてアメリカとの約束を反故にしようとした。
今回の拉致騒ぎは、そのつけを払わされた結果です。
そういう意味で李鳴大人は、アメリカや蒋介石に対し、まことに賢明な対応をされました。
遅まきながら敬意を表します。
言づては以上でございます」
ここまで
鹿地とは作家鹿地亘のこと
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